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vol.4

21世紀の大学像と今後の改革方策について
抜粋
文部省大学審議会
−平成10年10月26日−

3)高度専門職業人養成に特化した実践的教育を行う大学院の設置促進

 国際的にも社会の各分野においても指導的な役割を担う高度専門職業人の養成に対する期待にこたえ,大学院修士課程は,その目的に即した教育研究体制,教育内容・方法等の整備を図り,その機能を一層強化していくことが急務となっている。

 そのため,これまでの高度専門職業人の養成の充実と併せて,これを更に進め,特定の職業等に従事するのに必要な高度の専門的知識・能力の育成に特化した実践的な教育を行う大学院修士課程の設置を促進することとし,制度面での所要の整備を行い教育研究水準の向上を図っていく必要がある。

 高度専門職業人の養成に特化した大学院修士課程は,カリキュラム,教員の資格及び教員組織,修了要件などについて,大学院設置基準等の上でもこれまでの修士課程とは区別して扱い,経営管理,法律実務,ファイナンス,国際開発・協力,公共政策,公衆衛生などの分野においてその設置が期待される。

 この場合の学位については,国際的な通用性も考慮し,修士とすることが適当である。なお,修士(「専攻分野」)と表記する際の専攻分野の名称について各大学において工夫する必要がある。

 なお,大学院の修了と資格制度との関係では,現在,法曹養成制度の改革が進行中であり,今後,法曹養成のための専門教育の課程を修了した者に法曹への道が円滑に開ける仕組み(例えばロースクール構想など)について広く関係者の間で検討していく必要がある。

 さらに,幅広い分野の学部の卒業者を対象として高度専門職業人の養成を目的とする新しい形態の大学院の在り方等についても,今後関係者の間で検討が行われることが必要である。 


(ア)高度専門職業人の養成と大学院修士課程
  1. 近年,一部の大学では,社会の要請に対応して修士課程に高度専門職業人の養成やリフレッシュ教育を行ういわゆる専修コースや実務能力の育成を重視した社会人向けの研究科が設置されつつあるが,修士課程全体としては従来の研究者養成のための教育内容・方法からあまり変わっていないとの指摘がある。他方,社会人の受入れの進行に伴って,学生間の当該分野の習熟の水準の差の広がりが生じており,学生が大学院教育に求めるものも,先端的な知識であったり幅広い知識であったり,その一方,問題解決能力から実践的能力,実務的能力に至るまで,様々に分化してきている。
     
  2. 国際的にも社会の各分野においても指導的な役割を担う高度の専門的な知識・能力を有する者の養成や再学習などに対する期待にこたえ,大学院修士課程は,今後,高度専門職業人養成の目的に即した教育研究体制,教育内容・方法等の整備を図り,その機能を一層強化していくことが急務となっている。
     
  3. すなわち,各大学院の修士課程が,その分野において職業人等が当面している課題や求められる職能,資格制度との関係や大学院がそこで果たすべき役割などを踏まえ,養成しようとする人材を念頭に学生にどのような知識・能力を身につけさせることを目的とするかを改めて問い直し,その目的・役割を明確化し教育研究体制の整備を図る必要がある。さらに,それに即した体系的カリキュラムの開発・工夫を関係大学院等が共同して行うなどの取組を一層推進する必要がある。
     
  4. 修士課程における高度専門職業人の養成を考える場合,大学における教育研究と社会における実践・実務との関係が重要な課題であり,教員養成分野をはじめとする各分野において,実践・実務とのよりよい相互作用を目指し様々な交流が行われ,それが人材の養成のみならず大学における教育研究の広がり,豊富化につながっていくことが期待される。
     

(イ)高度専門職業人養成に特化した
   実践的な教育を行う大学院修士課程の設置促進
  1. 今後,高度専門職業人養成の目的に即した教育研究体制等の整備を推進しその機能を一層強化するという観点から,制度面でも所要の整備を行い,大学院修士課程におけるこれまでの高度専門職業人の養成を更に進めて,特定の職業等に従事するのに必要な高度の専門的知識・能力の育成に特化した実践的な教育を行う大学院の設置を促進し,かつそれぞれの大学院が質的に充実した教育研究を展開していくようにすることが必要である。
     
  2. 高度専門職業人の養成に特化した実践的な教育を行う大学院修士課程については,その目的に即した質の高い教育研究を確保するために,大学院設置基準等の上でも,i)授業・研究指導の柱としてケ−ススタディ,フィールドワ−クなどを取り入れることにより実践性を担保するカリキュラムの工夫,ii)実務経験のある社会人を相当数教員として迎えるなど教員の資格や教員組織の在り方についての配慮,iii)修了要件として,修士論文に代えて特定課題研究を原則とすることや課程制大学院の趣旨を重視する観点から30単位を超える単位数を課すことなど,一般の修士課程とは区別して扱うことが必要である。また,一定の規模以上の学生を擁する大学院にあっては,専任教員の配置等が必要である。
     
  3. この大学院修士課程においては,当該研究科等の目的・趣旨を学則等において例えば「○○等の高度の専門性を要する職業等に必要な高度の能力を養うことを目的とする」と規定するなど,自らが高度専門職業人の養成に特化した大学院であることを対外的に明らかにすることが必要である。
     
  4. 高度専門職業人の養成に特化した実践的な教育を行う大学院修士課程は,例えば経営管理,法律実務,ファイナンス,国際開発・協力,公共政策,公衆衛生などの分野においてその設置が期待される。    それは,これらの分野にあっては,   
    1. 近年,我が国社会・経済の構造変化と国際的な相互依存,世界的規模での競争の中 で,金融・経済・法制など各般の分野で国際社会の直面する新たな課題 の解決と公正な国際的ルール作りや合意の形成に積極的に参画し得る人材の育 成がとりわけ求められていること
    2. これらの分野において,我が国大学院修士課程は,理論と実務との関係あるいは資格制度と学部・大学院教育との関係などから,世界的に高い評価を得ている米国等のいわゆるビジネススクール,ロースクール等と比較すると,その目的・役割としてそのような志向は薄かったが,近年変化が生じてきていること
    3. 国際標準・ルールとその形成をめぐり,我が国あるいはアジア地域の特性に応じた枠組みの形成に向けた我が国としての努力が課題となっていること
    などから,大学院修士課程は,このような要請に対応し,これらの分野において国際的にも指導的な役割を担う高度の専門的な職業人の養成を行っていくことが特に必要と考えられるからである。
     
  5. 高度専門職業人の養成に特化した大学院の修了者に授与される学位の在り方については,現行の修士とは異なる別種の学位(専門職学位)とすべきであるとの意見もあるが,国際的な通用性を考慮し,修士とすることが適当である。  なお,修士(「専攻分野」)と表記する際の専攻分野の名称について各大学において工夫する必要がある。

(ウ)配慮事項
    高度専門職業人の養成に特化した大学院の設置が期待される分野としては,当面,先に触れた分野が考えられるところであるが,今後の我が国社会の進展,当該分野における取組の状況等に応じ対応することが必要である。
     また,後に2(1)2)で述べる修士課程1年制コースを高度専門職業人の養成に特化した修士課程に適用することについては,高度専門職業人の養成に特化した修士課程の設置状況等に配慮しつつ検討することが必要である。
     なお,高度専門職業人の養成に特化した修士課程の設置促進に当たっては,教育研究における理論と実務との接点という観点から,大学の教員と実務家との共同研究や大学の教員が一定期間実務を経験することの奨励・支援が必要であり,これらにより当該学問分野の発展に新たな可能性を開くことにもなることが期待される。

(エ)今後の検討事項
  1. 我が国の実情においては,米国等と違って大学院の修了が職業資格と直接的に結び付いていないことなどから,課程の目的と養成される人材との関係は必ずしも明確でないとの指摘もある。これに関して,現在,法曹養成制度の改革が進行中であり,今後,資格制度と関連して,法曹養成のための専門教育の課程を修了した者に法曹への道が円滑に開ける仕組み(例えばロースクール構想など)について広く関係者の間で検討していく必要がある。
     さらに,幅広い分野の学部の卒業者を対象として高度専門職業人の養成を目的とする新しい形態の大学院の在り方等についても,今後関係者の間で検討が行われることが必要である。
     
  2. また,高度専門職業人の養成に特化した実践的な教育を行う博士課程に関しては,その在り方について今後検討することが適当である。

4)卓越した教育研究拠点としての大学院の形成,支援
     世界の第一線に伍した水準の高い教育研究の積極的な展開,我が国の社会や国際社会の期待にこたえ様々な分野で積極的に活躍する優れた人材の養成の観点から,卓越した教育研究拠点としての大学院の形成,支援を図っていく必要がある。そのためには,専攻(分野によっては研究科)を単位とし,客観的で公正な評価に基づき,一定期間,研究費や施設・設備費等の資源を集中的・重点的に配分することが必要である。 


(ア)評価に基づく重点整備
  1. 世界の第一線に伍した水準の高い教育研究を積極的に展開していくことや,我が国の社会や国際社会の期待にこたえ様々な分野で積極的に活躍する優れた人材を養成していくことが必要である。そのためには,卓越した教育研究実績をあげることが期待される大学院や教育研究上の新しい試みに意欲的に取り組もうとしている大学院に対し,客観的で公正な評価を行うための適切な仕組みを工夫し,そのような評価を踏まえて,重点的な整備を行っていく必要がある。
     
  2. このような卓越した教育研究拠点としての大学院については,研究者養成を志向する大学院として高い評価を得たものをより一層充実していくことはもちろんのこと,高度専門職業人養成を志向する大学院の形成,支援も考える必要がある。また,我が国にとって人材こそが今後の発展の原動力であることにかんがみ,形成,支援しようとする大学院がどのような点で卓越しているのかを考える際は,実績としてあげられる具体的な研究成果等に着目することはもとより,優れた人材を養成するためのカリキュラムや教育方法等の工夫がどのようになされているかといった観点や,将来的に大きな成果をあげると期待される教育研究プログラムを育てていくという配慮が必要である。
     
  3. 卓越した教育研究拠点としての大学院の形成,支援のためには,各資源配分機関は,専攻(分野によっては研究科)を単位とし,客観的で公正な評価に基づき,一定期間,研究費や施設・設備費等の資源を集中的・重点的に配分することが必要である。

(イ)評価に当たっての留意事項等
  1. 評価の項目としては,例えば,学生の入学状況,学位の授与状況,修了者の進路の状況などの学生の教育面に関する項目,教員の論文発表状況,学会での活動状況,国際的な学会や学術誌等における論文の発表や被引用状況,科学研究費補助金の採択状況などの教員の研究面に関する項目等を勘案しつつ,新しい試みや将来的な発展の可能性などの定性的な側面にも十分留意することが必要である。
     
  2. また,評価を行うに当たっては,教育機関の評価としての修了者に対する評価も含め,様々な評価に関する必要なデータを集めたり評価の内容を検証したりすることが必要であり,評価自体の客観性・透明性を確保することが重要である。


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