「制度を活かすもの、それは疑いもなく人である」。司法制度改革審議会最終意見において、法曹制度にかかる部分は、この一文で始まる。司法制度改革成功の鍵は、制度を支える法曹にあるのだ。中でも、「社会生活上の医師」として広く社会公益を担い、市民のために幅広い法律サービスを行うことが期待されるのが弁護士である。
 2004年に法科大学院が設置されると、司法研修所の実務法学教育とリンクした高度な専門教育が行われ、司法試験合格者増員により新規法曹が大幅に増えていく。弁護士の質が一層向上していき、弁護士人口は先進諸国の水準にまで近づいていくことになる。
 今後は法科大学院教育を受けた弁護士が多く誕生することにより、地域的・分野的な「弁護士過疎」が解消されることはもちろん、法廷実務を中心としながらも、市民生活、企業・団体活動の隅々まで、真の「法の支配」を及ぼすべく活躍することが期待される。今年4月から始まった弁護士法人制度も、市民のためにサービスの安定供給を目指して認められたものだ。
 現在、司法制度改革推進本部法曹制度検討会において弁護士制度改革の具体化が進んでいる。それは、弁護士の活動領域拡大のため、弁護士の公務就任や営業分野での活躍を阻んでいる規制(弁護士法第30条)の緩和のほか、懲戒制度(情報公開)、弁護士会運営の在り方、弁護士倫理の在り方など多岐に及ぶ。規制改革が進展し、個人・企業の自己責任が強く求められる現代社会において、紛争を予防し解決する弁護士への期待はますます大きくなるばかりだ。
 今回の特集では、社会の隅々まで法律サービスを行き渡らせるためにはどのような改革が必要かという視点から、お話をうかがう。



資料 弁護士制度改革の方向性(主に、弁護士の活動領域の拡大にかかる部分について)


参考:司法制度改革推進計画(2002年3月19日閣議決定)



資料 弁護士法(抜粋)

■第1条 弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。
[2]弁護士は、前項の使命に基き、誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない。
■第4条 司法修習生の修習を終えた者は、弁護士となる資格を有する。
■第5条 左に掲げる者は、前条の規定にかかわらず、弁護士となる資格を有する。
【1】最高裁判所の裁判官の職に在つた者。
【2】司法修習生となる資格を得た後、5年以上簡易裁判所判事、検察官、裁判所調査官、裁判所事務官、法務事務官、司法研修所、裁判所書記官研修所若しくは法務省設置法第4条第36号又は第38号の事務をつかさどる機関で政令で定めるものの教官、衆議院若しくは参議院の法制局参事又は内閣法制局参事官の職に在つた者。
【3】5年以上別に法律で定める大学の学部、専攻科又は大学院において法律学の教授又は助教授の職に在つた者。
【4】前2号に掲げる職の2以上に在つて、その年数を通算して5年以上となる者。但し、第2号に掲げる職については、司法修習生となる資格を得た後の在職年数に限る。
■第30条 弁護士は、報酬ある公職を兼ねることができない。ただし、衆議院若しくは参議院の議長若しくは副議長、内閣総理大臣、国務大臣、内閣官房副長官、内閣危機管理監、内閣官房副長官補、内閣広報官、内閣情報官、内閣総理大臣補佐官、副大臣(法律で国務大臣をもつてその長に充てることと定められている各庁の副長官を含む。)、大臣政務官(長官政務官を含む。)、内閣総理大臣秘書官、国務大臣秘書官の職若しくは国会若しくは地方公共団体の議会の議員、地方公共団体の長その他公選による公職に就き、一般 職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律第5条第1項(裁判所職員臨時措置法において準用する場合を含む。)に規定する任期付職員、自衛隊法第36条の4第1項に規定する任期付隊員若しくは地方公共団体の一般 職の任期付職員の採用に関する法律第5条第1項 に規定する特定任期付職員若しくは一般 任期付職員となり、若しくは常時勤務を要しない公務員となり、又は官公署より特定の事項について委嘱された職務を行うことは、この限りでない。
[2]弁護士は、前項但書の規定により常時勤務を要する公職を兼ねるときは、その職に在る間弁護士の職務を行つてはならない。
[3]弁護士は、所属弁護士会の許可を受けなければ、営利を目的とする業務を営み、若しくはこれを営む者の使用人となり、又は営利を目的とする法人の業務執行社員、取締役若しくは使用人となることができない。
■第72条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般 の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律に別 段の定めがある場合は、この限りでない。