税こそは政治である

 税こそは政治である、と言われる。近代民主国家は、徴税問題が発端となって成立したと言っても過言ではない。平民と貴族の間の不平等税制への不満からフランス革命が起こり、高い税金に怒った市民が大量 の茶箱を海に投げ捨てた「ボストン茶会事件」がアメリカ独立戦争のきっかけとなった。
 日本においては、第二次世界大戦後、日本国憲法の制定に伴って、民主的な税制が整備された。戦費徴収のための国家総動員的税制からの大きな転換であった。しかし、今や税制は、非常に複雑で、国民から遠い政治分野の一つとなっている。
 税制を難解なものにしている要因の一つに、租税特別措置(KEYWORDS参照)がある。法人税一つをとっても、いくつもの控除措置がとられている。既得権益化しているものも多い。この制度を見るだけで税の基本原則である「公平・中立・簡素」が、現在の日本では完全には実現されていないことが分かる。

国民の納税者意識


 また、国民の納税者意識を担保する制度として、申告納税制度(KEYWORDS参照)がある。自ら税額を申告して納めることにより、税金の使途にまで関心が及ぶ効果 があるとされる。民主的な税制の基本ともなるこの制度だが、実際には機能していると言えるのであろうか。この国の人口の多くを占めるサラリーマンの給与から引き落とされる税金は、給与明細には記載されるが、実際は自分の手に一度も渡ることはない。また、年末調整があるため、確定申告の必要すらない。そのため、自分が稼いだお金が国家を運営する費用となっていることを実感しにくいのが現実である。

財政改革と税制改革

 現在、小泉内閣によって、構造改革が進められつつある。特殊法人の組織見直し等の改革によって歳出が透明化され、国民の監視が容易になる。その点で、納税者意識を喚起する効果 はあると言えるが、残念ながら、歳出サイドの改革が主で、税制は主要なテーマとはなっていない。
 しかし、財政の構造改革は、歳入・歳出の両サイドより進められるべきなのではないだろうか。
 今後、税制はどのように改革されるべきなのか。様々な角度から識者にお話をうかがった。変革の風が吹く今、税制を改めて考えてみる。