最終意見は、司法に携わる者たちの業務・職域に将来にわたって大きな影響を与える。
資格者団体は、最終意見をどう受けとめ、どう対応しようとしているのか。

KEYWORDS

法科大学院


 アメリカやカナダで定着している専門教育システムをモデルとした、法曹養成のための専門大学院のこと。「プロセス」を重視する法曹養成制度を整備することによって、法曹の質・量 のレベルアップを図る。審議会が最も力をいれた項目であり、かなりの頁が割かれている。
 法曹人口増員計画とも密接にかかわる。増員計画の具体的な数値や法科大学院開校目標年度については、本誌5頁を参照していただきたい。
 現在は設置基準等が発表されていないという状況にもかかわらず、各地域への適正配置・実務家教員の確保・財政的な問題・入学試験の方法などが、大学を始めとして、様々なところで論じられている。

弁護士法第72条


 「弁護士でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般 の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。但し、この法律に別 段の定めがある場合は、この限りでない。」

弁護士法第30条


 「弁護士は、報酬ある公職を兼ねることができない。ただし、衆議院若しくは参議院の議長若しくは副議長、内閣総理大臣、国務大臣、内閣官房副長官、内閣危機管理監、内閣官房副長官補、内閣広報官、内閣情報官、内閣総理大臣補佐官、副大臣(法律で国務大臣をもつてその長に充てることと定められている各庁の副長官を含む。)、大臣政務官(長官政務官を含む。)、内閣総理大臣秘書官、国務大臣秘書官の職若しくは国会若しくは地方公共団体の議会の議員、地方公共団体の長その他公選による公職に就き、一般 職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律 (平成12年法律第125号)第5条第1項 (裁判所職員臨時措置法 (昭和26年法律第299号)において準用する場合を含む。)に規定する任期付職員となり、若しくは常時勤務を要しない公務員となり、又は官公署より特定の事項について委嘱された職務を行うことは、この限りでない。
2  弁護士は、前項但書の規定により常時勤務を要する公職を兼ねるときは、その職に在る間弁護士の職務を行つてはならない。
3  弁護士は、所属弁護士会の許可を受けなければ、営利を目的とする業務を営み、若しくはこれを営む者の使用人となり、又は営利を目的とする法人の業務執行社員、取締役若しくは使用人となることができない。」

ADR(alternative dispute resolution)


 裁判外の紛争解決手段。わが国におけるADRとしては、裁判所による調停手続き、また裁判所外では、行政機関、民間団体、弁護士会などの運営主体による仲裁、調停、あっせん、相談など多様な形態が存在する。代表的なものに、交通 事故紛争処理センター、日本知的財産仲裁センターなどがある。
 最終意見では、その拡充・活性化が提言された。具体的には、関係機関との連携強化(総合的な相談窓口の充実、インターネットを利用したワンストップでの情報提供)や、制度基盤の整備(「ADR基本法」による手続きの整備、国際商事法制を含む仲裁法制の整備)をするべきだという記述がある。その他、隣接法律専門職種の活用にも触れられており、企業法務との関係をふくめて、法制上の明確な位 置付けが必要であるとされた。そのためには、弁護士法第72条の見直しが必要となってくるだろう。

弁護士任官


 弁護士経験者が、裁判官となるシステム。日本では、司法修習を終えた者が任期10年の判事補となり、裁判所内で訓練され、判事の多くはその中から任命されるというキャリア・システムが採用されている。だが、判事の給源の多元性を予定する裁判所法第42条(注)の趣旨の実質化を図るために、弁護士任官の推進が提言された。
 また、これと併せて、原則としてすべての判事補に裁判官の職務以外の法律専門家としての経験を積ませることも提言されている。
 純粋な法曹一元制度と制度目的は異なるが、その考え方を一部取り入れたものだといえるだろう。
(注)裁判所法第42条
「高等裁判所長官及び判事は、左の各号に掲げる職の一または二以上にあってその年数を通 算して十年以上になる者の中からこれを任命する。
一 判事補
二 簡易裁判所判事
三 検察官
四 弁護士
五 裁判所調査官、司法研修所教官または裁判所書記官研修所教官
六 前条第一項第六号の大学の法律学の教授または助教授」


裁判員制度


 法定刑の重い重大犯罪について、裁判官と、選挙人名簿から無作為抽出された裁判員が、ともに評議し、有罪・無罪の決定及び量 刑決定を行う。司法の国民的基盤を確立し、司法への国民参加を活発にするために導入するべきとされた。また、職業裁判官が国民たる裁判官と合議することにより、より常識にかなった判断をすることができると言われている。
 裁判員と裁判官の比率や、「法定刑の重い重大犯罪」の基準など、実現までに解決すべき課題は多い。また、裁判員制度への参加を希望しない人も多いなど、今のところ、国民全体の関心が高いとは言い難い状況にある。国民の負担感を減らし、裁判に参加しやすくするには、集中審理を実現することにより、拘束時間を短くするなどの工夫が必要だろう。


資料 資格者団体見解比較表

ここをクリックしてPDFファイルでご覧ください]

編集部作成