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vol.2




顔の見える支援が安全保障につながる


column 衆議院議員 滝 実 氏

滝氏はコソボ紛争で難民が発生したとき、現地のキャンプに飛び、視察を敢行した。危機管理に造詣が深い滝氏にY2Kの問題にも通じる、海外の支援活動についてお聞きした。


 私はコソボ紛争で難民の問題が生じたとき、現地に飛んでいきました。現場で情報をキャッチし、そこでものを考える。私はそれが危機管理の基本だと思っています。
 コソボ問題はヨーロッパ諸国では最大の関心事であり、血眼になってこれにかかわっています。これに対して、日本が無関心であっていいのか? 商売となると、元気な顔で世界中、走り回っているのに、
危機を迎えたときは、日本人の姿はまったく見えない。勝手な国民とみられる。そのようなことが続けば、日本の安全が脅かされる事態になったとき、各国は本気で助けてくれるでしょうか? 困っている国や地域があれば、日本は日本の立場で取り組む。その積み重ねがあってはじめて日本が窮地に立ったとき、諸外国が助けてくれる。私はそれこそが安全保障の礎であり、国家の危機管理につながることだと思います。 



 現在の経済危機の中、日本政府はコソボ難民を助けるために、財政的な負担をしています。 
 しかし、欧米各国のほとんどの国民はそのことを知りません。なぜなら、CNNにもBBCにも映らないからです。テレビを見ていれば、NATO(North Atlantic Treaty Organization/北大西洋条約機構)軍が空爆に踏み切った理由、アメリカが参画している理由がわかります。しかし日本の姿は見えません。
 私は第1スタニコバツというキャンプを視察しましたが、そこはイギリス軍による設営で、場内にはユニオンジャックがひるがえり、テントにはイギリス軍のマークが入っていました。
 物資調達のための資金は圧倒的に日本が負担しているのです。ところが、海外のテレビに映るのは食料を積んだイギリス軍のトラックがキャンプに到着するシーンです。
現状の日本の援助では世界に顔が見えません。
 「援助している」と声高に喧伝することはないが、支援する以上は、姿が見えたほうがいい。そのためには資金だけではなく、人的な貢献が重要になります。難民キャンプは国連の高等難民弁務官事務所が運営の責任者ですが、実作業としては世界から集結したNGO(non-governmental organization/非政府組織)が受け持っています。


 しかし、コソボのキャンプには日本人ボランティアの姿はありません。NGOが紛争地帯で活躍することは一朝一夕には実現しません。各国のNGOはこれまでアフガニスタンやカンボジアなどで実績を積んできたわけです。そこに経験のない日本のNGOがいきなり行ったところで、役立たないどころか、かえって足手まといになる可能性もあります。 
 今後、日本のNGOが貢献ができるようにしていくためには、政府も一定の役割を果たす必要があります。
今の日本の制度のままでは、力を発揮させることはできません。日本政府の支援がもっと必要だと私は自民党の会合などでもたびたび発言しています。
 「活動資金は確かにNGOはカンパで動くことはできます。しかし世界各国とも、NGO本体の職員の人件費をかなり支援しているのです。日本もNGOがきちんと働ける条件整備を行うことが必要です。それはある意味で、自国の安全保障にもつながることです」


 そう訴えています。
 また日本各地に消防団が組織されていますが、私はいずれこれを母体にした海外支援のためのボランティア組織をつくっても良いと思います。もともと消防団はボランティア精神によって組織されているわけです。
各消防団が順番に海外支援に行くという方法も考えられるでしょう。海外には日本の消防団に匹敵するような組織はほとんどありません。これだけまとまって、訓練を積んでいるグループは少ないのです。世界に誇るべき消防団の力を利用しない手はないと思います。




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