↑What's New ←目次
vol.2

21世紀政策構想フォ−ラム

21世紀政策構想フォ−ラムの
「金融アセスメント法案」の提案について

独立非営利のシンクタンクである「21世紀政策構想フォーラム」は、中小企業に対する銀行融資を促進させるために「金融アセスメント法案」の策定に取り組んでいる。同法案の提案理由及び内容は次の通りである。



I.「金融アセスメント法案」を提案する理由
 巨額の不良債権を抱えた大手の銀行救済のために、昨年、これまた巨額の公的資金が銀行に注入されたが、日本経済を支える中小企業への金融は「特別信用保証」による「緊急輸血」はあるものの、大手銀行による貸し渋りは改善されず、さらにひどくなっているのが現状である。
 こうした情勢の中で、21世紀政策構想フォ−ラムの政策研究チ−ムである「経済プロジェクト(主査:山口義行、立教大経済学部助教授)」は、いま、銀行に公共性を持たせ中小企業への融資促進など、地域に貢献する体質に改善させる「地域再投資法案(仮称)」の策定にむけて政策形成作業を行っている。
 米国には、金融機関に「地域の信用需要に積極的にこたえる」ことを義務づけた「地域再投資法(CRA=Community Reinvestment Act)があるが、この法律からヒントを得て日本においても、地元の利用者の立場から、望ましい金融機関のあり方を目指していこうとするものだ。フォ−ラムが立案中の法案は一言で言えば「金融機関ごとに、資産運用に占める地元比率や中小企業への融資比率、貸し渋りなど融資条件の一方的な変更をしていないかどうか、地域の金融環境への影響を金融監督庁に評価させるごとを義務づける法案だ。その法案の中身は次のようなものである。


II.法案の内容
  1. 金融監督庁に「監督対象金融機関が、経営の安定性と健全性を保持しつつ、営業認 可を受けた個々の地域の融資ニ−ズに継続的に積極的に応じるよう、監督・指導する」ことを義務づける。
  2. 銀行の行動に関し、次の評価事項を設定する。
    (1)地域貢献度 ― 資金運用に占める地元比率、自治体の地域開発プロジェクトへの参加、支援活動、優遇措置の地域や顧客への還元度
    (2)中小企業貢献度―地元中小企業への融資比率(金額・件数)
    (3) 資金供給安定度―融資額や融資条件の一方的変更(貸し渋り)の有無。既存利 用者の利便性を著しく害する営業店・出張所等の移転・廃止の有無など。
    (4)取引公正度―説明義務を怠る等の理由で利用者に損害を与えた事例の有無、その適正な事後処理の有無
  3. 金融機関に対し、2の評価事項について「優秀」、「良好」、「改善必要」などの「格付け」を実施する。「改善必要」の場合は、監督官庁が指導を行い、改善が確認されるまでは支店設置や合併など、新規事業展開を制限する。 ・・等である。

III.法案提出の意義
 「金融アセスメント法」ができると、金融機関は大手の銀行を含め、地元の中小企業への融資を重視するようになり、地域経済の発展や地域の資金需要掘り起こしに、日常的にさらに一層真剣に着手するようになる。中小企業は、健全な体質を保持しているにかかわらず資金繰りが不安定化して倒産するという深刻な事態に陥っている。日本経済発展の原動力になってきた中小企業を支援する事は21世紀の日本経済の安定的発展にとって 不可欠な政策であるが、日本政府の現在の政策は、中小企業への対策が極めて貧困であり、こうした政策は日本経済の将来に大きな不安を与え、消費者の個人需要を冷え込ませているのが現状である。21世紀政策構想フォ−ラムはこうした現状を打破し、中小企業活動を活性化させることを通じて、日本経済を立ち直らせ、国民に未来への明るい希望を持たせようとするものである。


IV.米国の地域再投資法について
  米国の「地域再投資法(CRA:Community Reinvestment Act)」は、「金融機関が事業認可を受けた特定地域の融資ニーズの充足に、経営の安全性と健全性を保持しつつ 貢献することを促すために、それぞれの該当する連邦金融監督官庁が、検査時にその権限を行使するよう義務づける」ことを目的として、次のことを規定している。

  1. 規制対象金融機関は、その預金施設が事業認可を受けた地域に便宜を与え、また当該地域のニーズに応じるものであることを証明する法的義務を負う。
  2. 地域における便宜及びそのニーズの中には、預金サービスと同様、融資サービスへのニーズも含まれる。
  3. 規制対象金融機関は、事業認可を受けた特定地域の融資ニーズの充足に継続的かつ積極的に貢献する義務がある。
読んでわかるとおり、米国の金融機関たるものは、事業の認可を受けた地域においては「地域に便宜を与え、地域のニーズに応」えなければならないことになっている。つまり「営業している地域においては、地域に何らかの便宜を与え、ニーズに応じないといけない」ことになっている。従って、地域に便宜を与えていなかったり、地域のニーズに応じない活動を行っている事業は法的に問題とされることになる。 「地域の便宜、ニーズ」とは地域の特定のものを対象として行うものであってはならないことになっており、朝日新聞でも、非営利団体のロッドストック研究所が米国のイリノイ州とオハイオ州の銀行に対し、融資が高所得者の住む地域に偏っていることを指摘している。NPO団体がこうした行動をとれるのも米国に「地域再投資法」が存在しているからである。


米国には又、銀行のある地元住民が「銀行を格付けする」というシステムがあり、地域住民の意思を無視して銀行が勝手に行動できないような仕組みが出来上がっている。日本では、銀行自身が作り出した不良債権により経営悪化を救うため国民の税金が投入されたが、公的資金を投入された銀行が国民のために行動しなければならないと言う義務は課せられていない。 預金しても利息は低く、中小企業が融資を要望しても態度は極めて冷淡であり、日本の銀行には自己の公共的使命が全く感じられていないように見える。
日本における金融問題が焦点となったいま、金融機関が、その公共的性格を強く自覚することが求められる。


「ポリシーフォーラム21」第2号発行のお知らせ

21世紀政策構想フォーラムの機関誌である「ポリシーフォーラム21」の第2号が 発行されましたのでお知らせいたします。21世紀に向けて日本が取り組まなければ ならない政策課題であるアジア経済、金融、司法及び税制改革、安全保障問題、日本 外交の課題など総合的に取り上げ問題点を深く分析し、国際的視点を持った政策提 起を行っています。是非ご購読お願いいたします。価格、申し込み先は下記のとお りです。

定価: 1000円
申込先: 〒107―6017
東京都港区赤坂1―12―32 アーク森ビル
21世紀政策構想フォーラム事務局
TEL:03-5572-7557 FAX:03-5572-7560
振込先: 郵便振替口座:00110―0―354712(送料別)

←目次

↑What's New ←目次
vol.2
Copyright 1999 株式会社東京リーガルマインド
(c)1999 LEC TOKYO LEGALMIND CO.,LTD.