株式会社 旭リサーチセンター 代表取締役社長
司法改革フォーラム会長 鈴木良男

「身近な司法」実現に向け、明確な道筋を

司法制度改革審議会 「中間報告」への声明

  政府の司法制度改革審議会は中間報告において法曹人口の年間3000人への拡大を打ち出した。中間報告は法曹を「社会生活上の医師」と位 置付けながら、3000人はあまりにも拡大規模が小さいだけでなく、達成時期も不明確であり、羊頭狗肉といわざるを得ない。裁判の迅速化や法律相談業務の拡充、行政、立法機関や民間会社などへの法曹人の浸透には、この増員規模ではきわめて不十分であり、中間報告は国民の審議会に寄せる期待を裏切るものである。
 昨年秋以来、利用者の立場から司法改革を研究してきた当フォーラムは、司法試験合格者数を毎年1000名ずつ増やし、2011年には12000名とし、2011年には日本の法曹人口を現在の約2万人から9万人台に充実させ、少なくとも先進国最低水準の仏に並ぶ増員目標を掲げるべきだと考える。政府・審議会は2001年夏の最終報告に向け、法曹三者の意見ばかりでなく利用者の声に真摯に耳を傾け、大幅増に向けた議論をゼロからやり直すべきである。
 そのうえで、「身近な司法」への道筋を確かなものとするために、最終報告には目指す法曹人口の絶対的規模およびその実現時期を明確に示すべきだと考える。そうでなければ臨時司法制度調査会後の「失われた40年」に加え、国家百年の大計の機を失うこととなる。
  「法科大学院(仮称)」いわゆるロースクールに関して、法曹・大学関係者による認定ロースクール修了者にしか新司法試験受験資格を与えないとしたことは、法律ギルド代表者に法曹人口増の生殺与奪権を付与する「需給調整装置」に他ならない。ロースクールに司法試験受験対策のうえでの人為的な優遇を施すことをいささかでも認めてはならない。
 さらに、利用者の視点から、弁護士法72条(弁護士の法律事務独占)をはじめとする競争制限的規制を徹底的に見直し、早急に結論を出すべきである。


PROFILE 鈴木良男(すずき よしお)

1934年愛知県生まれ。1959年東京大学法学部卒業。旭化成工業株式会社入社。1989年旭化成工業株式会社取締役。1991年法曹養成制度等改革協議会協議員。1992年株式会社旭リサーチセンター代表取締役社長。経済団体連合会行政改革推進委員会委員。1995年旭化成工業株式会社常任顧問。村山内閣行政改革推進本部規制緩和検討委員会専門委員。行政改革委員会規制緩和小委員会参与。1999年行政改革推進本部規制改革委員会委員長代理。司法改革フォーラム会長。2000年日本商工会議所経済法規問題懇談会座長。主な著書『規制緩和は何故できないのか』『日本の司法ここが問題―弁護士改造計画』『暗闇 NTT Vs. 郵政省』。