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通巻 194号


特集 労働市場最前線 ―労働力需給調整システムをとりまく環境―

 主な動き
通産省「経済活動と司法制度に関する企業法制研究会報告書」(5月9日)
自民党司法制度調査会報告書「21世紀の司法の確かな一歩
  −国民と世界から信頼される司法を目指して− 」(5月18日)
「国立大学法人」2004年度からスタートへ
  〜国立大学長・大学共同利用機関長会議〜(5月26日)

○通産省「経済活動と司法制度に関する企業法制研究会報告書」
(5月9日)

 通産省産業政策局長の研究会として設置された「経済活動と司法制度に関する企業法制研究会」が、今年1月からの議論の結果を、報告書としてとりまとめた。全116頁にも及ぶこの報告書では、経済活動の担い手たる企業からみた司法制度の問題点と具体的な改革案が詳しく論じられている。裁判制度の見直しと弁護士制度の見直しを柱とし、実務を精密に分析した価値ある提言である。

<報告書における提言(抜粋)>
1.インターネットを通じて訴訟の訴状、答弁書、準備書面を電子媒体により提出すること(p.18)
2.裁判官増員に向けた当面の措置として、学者・弁護士その他法的素養を有する者の中からパート・タイムで裁判官を起用すること(p.20)
3.訴訟利用者の立場から見て特に迅速性が求められる分野または迅速性を図るに特に適した分野に関する特殊な訴訟類型の創設と、訴訟全般における計画審理の徹底を図ること(p.26)
4.少額訴訟の請求適格を90万円に引き上げ、簡易裁判所を少額裁判所化し、地方裁判所にファーストトラック制度を創設すること(pp.27-32)
5.鑑定人となることへのインセンティブとして、「裁判所鑑定士」という称号を付与すること、および「法人鑑定人」制度を導入すること(pp.45-46)
6.専門的紛争への対応として、裁判所専門部の充実、専門裁判所の創設、専門家参審制の導入を図ること(pp.47-48)
7.民事執行の実効性担保のため「履行形態確定の申立制度」を設け、受訴裁判所が履行支援措置と排除・制裁措置の適切な組み合わせまたは使い分けができるようにし、履行確保を図ること(pp.55-59)
8.執行妨害対策として、債務者不特定のまま仮処分決定を行う、新しい類型の保全処分を創設すること(p.62)
9.民間型ADRの機能拡充として、ADRセンター機能を設けること、サイバーADRを設けること(pp.78-82)
10.弁護士報酬については自由な価格設定による競争と各種報酬・費用に関する情報開示を強化徹底すること(p.90)
11.ロースクールの設置基準を明確にし、法曹人口の新たな需給調整手段とならないようにすること、及び定員、科目、授業料につきロースクールの自由裁量を拡大し、競争を促進させること(p.102)
12.弁護士法第72条の見直しを行い、弁護士と隣接法律専門職種との相互参入を進めること(p.106)
13.総合的法律・経済事務所の開設、弁護士事務所の法人化、複数事務所化を促進すること(pp.107-110)

○自民党司法制度調査報告書「21世紀の司法の確かな一歩
―国民と世界から信頼される司法を目指して―」(5月18日)

 自民党司法制度調査会(保岡興治会長)は、党内審議、関係団体からのヒアリング結果を踏まえ、報告書をとりまとめた。1999年11月より調査会内に5つの小委員会(国民の争訟解決を支援する小委員会、法曹一元、陪審・参審制度等、国民の司法参加に関する小委員会、知的財産権の法的保護・特許裁判のあり方に関する小委員会、法曹養成・法曹教育及び資格試験のあり方に関する小委員会、裁判の迅速化など裁判のあり方に関する小委員会)が設けられ、検討が重ねられてきた。この報告書は、小委員会の検討結果を提言形式に集約したものであり、10月にも予定される司法制度改革審議会の中間答申に、少なからぬ影響を与えるといえよう。

<報告書における提言(抜粋)>
1.隣接法律職種活用のメリットと改革の方向性(pp.6-7)
訴訟に関与させることについて国民の理解を得ることができる隣接法律職種については、訴訟代理権等を付与するなどその訴訟への関与を基本的に拡大する方向で積極的な検討が進められるべき。(隣接法律職種に訴訟代理権等を付与するとしても)資格者の能力の不足により、国民が不測の損害を被ることのないよう適切な能力的担保措置が講じられるべき。来年7月を待つまでもなく、適切な能力的担保措置等の諸条件の整備が進められ、これを踏まえて、司法制度改革審議会において早期に具体的かつ前向きな結論が示されることを期待する。

2.法曹人口の増加(p.15)
先進諸国の中で、法曹人口の少ないフランスと比較しても、日本の法曹人口が少ないことは明らかであり、例えば、一定期間内にフランス並みを目指していくというような目標の設定が望ましい。また、法曹人口の増加により、法曹に優秀で多様な人材を招き入れることができる上、切磋琢磨することにより自ずと質の向上がもたらされるという面もあることから、その目標設定に当たっては、適正な競争を生み出すようなものであることが必要であろう。

3.21世紀の法曹養成の在り方(p.17)
法律の専門家に必要な基礎的知識・能力を共通化し、専門家同士の流動性を高めていく必要がある。その一方策として、例えば、法律の専門家を目指す者が、学部4年次相当の時期に、法律の専門家に共通して必要とされる基礎的知識・能力を判定する法律専門家統一試験(仮称)を受験し、その試験での得点を各  法律専門家の個別試験の基礎的データとして利用できるような制度を設けることが考えられる。


○「国立大学法人」2004年度からスタートへ
   〜国立大学長・大学共同利用機関長会議〜(5月26日)

 独立行政法人通則法に基づき、国立大学を独立行政法人とする方針が、5月26日の国立大学長会議で中曽根文相より正式に表明された。学長人事や教育研究の中期計画(通則法第30条以下)に係る大学の自治を最大限尊重するため、特例制度が設けられる見込みである。
国立大学法人制度では、独立採算の方式は採られないものの、収益能力で大学間に格差が生じるおそれがあることは否めない。とりわけ、産学共同研究の実施環境に乏しい地方の国立大学には深刻な打撃を与える。
また、法科大学院構想の方向性にも影響する。法学部の上位教育という位置付けで法曹養成を行う日本型ロースクールが導入されようとしているが、認定校システムは健全な教育経営が確保されうる大都市圏の国立大学に有利に働くであろう。そして、地方大学の法学部は、ますます学生の集客能力を喪失していくであろう。



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