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通巻 194号

今月のことば

〜我が国における租税改革の意味〜

反町 勝夫
■ LEC東京リーガルマインド代表取締役社長 ■ 


 我が国の国家権力機構は、過去数年急ピッチの改革が行われている。財政改革・行政改革・司法改革・地方制度改革等である。今世紀最後の年における総選挙の結果や南北朝鮮の首脳者による統一に向けた会議の動向、米国大統領選の結果、そして景気の頂点を打った米国経済の秋以降の動向等が、今後の日本の政局・経済成長に大きな影響を与えるであろう。つまり米国経済の破綻が生じた場合、日本の輸出を支える基幹産業が打撃をうけ、その結果予算編成に困難を来すであろう。国債・地方債合わせて700兆円に迫る膨大な国の債務残高が既に生じているため、国の財政は10%ないし15%の消費税のアップ、各種資産税率の引き上げ等が与野党の賛成の下であっけなく国会で承認される恐れがある。
 すなわち残された国の大きな改革は租税改革だ。そもそも近代国家は、国民に課せられる税金を巡って国王ないし国家と闘争が繰り返され、市民革命によって形成されたものである。イギリス、フランス、アメリカ、然りである。明治維新・昭和20年における敗戦後の我が国の変革は、国家と国民の租税を巡った争いを通して行われたものではない。その意味で20世紀最後の年に始まる租税改革は、日本の現代国家としての理念の形成に画期的な意義をもたらすことになるかもしれない。
 そもそも現代国家は、国民の納税による資金を原資として運営される。憲法が定める国民主権とは納税者主権と同義である。敢えていえば、納税なければ主権なし、ということである。憲法30条は「国民は納税の義務を負う」と定めるが、理念上は「国民は、基本的人権として納税の権利を有する」という意味である。
 マスコミで議論されている消費税の適用除外、課税最低限の引き下げ・引き上げ、勤労者の源泉徴収制度、所得税の累進課税等の問題は、このような基本視点から再構成されなければならない。
 さらに21世紀は、知識情報が社会の富の中核となる知価社会であって、従来のモノ中心の産業から知識創造・デジタル・ネットワーク中心の情報産業になるので、従来のモノ中心の企業会計原則・国際会計基準・企業の財務諸表・管理会計体系にしたがってこれを教授する教育システムは、知識創造・デジタル中心の会計原則・基準・財務諸表・管理会計等に根本的に変革されねばならないであろう。
 その意味で、新しい理念を感得しうる知識創造能力を有する人々・専門家・新人類にとっては、輝かしい未来に向けた活動と生活と文化が開化することになり、夢と希望の21世紀の到来となろう。

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