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通巻 193号

今月のことば

〜教育改革〜

反町 勝夫
■ LEC東京リーガルマインド代表取締役社長 ■ 


義務教育について
 日本での義務教育は中学校までであるが、中学を卒業すれば健全な日本国民たる要件を具備している。しかし、その要件を満たしていない。何が欠けているかというと、国民になると参政権の行使ができる。投票することは民主主義の行使である。しかしながら日本においては投票行為の概念は、例えば、親類縁者であったり、誰かに頼まれて投票したり等といったことや何かの見返り行為という意味合いが根強く残っているのではないだろうか。
そのような行為は真に日本の国を良くしようという民主主義の行使ではない。何のために投票するかという教育を中学卒業までに教えていないのが現状である。つまり大正時代から始まった選挙権について中学卒業までに歴史を教えても選挙権に関することを詳しく教えていないし、また、現代政治の科目もない。国民たる要件は公共の福祉による制限がある。他人の人権を尊重することは自分の人権を尊重することであり、その具体例を教えていない。


日本という国を21世紀に向かって誇りある国にしなければならない。日本という国を本当に考えてきた偉人の伝記を小学校・中学校において教える必要がある。現代においてはこの部分に欠け、それを抽象的に「倫理」だとか「親孝行」という言葉で教えても意味はない。偉人達の伝記において教えるという教育が必要と考える。それが、大江健三郎であってもビートルズであっても構わない。


高校教育について
 高校については、大学受験一辺倒ではなく、音楽の好きな人は音楽を、体育の好きな人は体育を、というように本人の興味に従って高校を選択できるようにすべきである。自分の職業に関わる問題であるから大人が職業や産業に関するアドバイスをする環境作りをはじめる必要がある。そのような3年間にすると個性や能力を十分に発揮できる環境が生 まれ、学級崩壊・荒れる学校やいじめも高校中退もなくなるのではないだろうか。
自分のやりたいことは何でもできるような高校3年間にするようシステムを変えるべきである。つまり自分の将来の職業に従った高等学校の勉強を重視するように作り変え、それには普通高校優先などというような方針は捨てるべきである。


大学教育について
 アメリカのように「産」=産業、「学」=学問、「官」=官庁が連携して21世紀に役に立つ高等教育を作るべきである。そのためには、官庁にいる人材を大学で教えることができるようにする、産業界にいる人材を大学で教えることができるようにする、大学で教える人が官庁や産業界に入ることができるようにする、ような人事交流を行うことが肝要である。そうすることで大学教育は面白みが出てくる。
一橋大学教授の中谷彰宏氏がソニーの社外取締役に就任することが話題となったが、このことはとても意義あることであったが、国立大学の教授は国家公務員であるので民間企業の社外取締役になるためには大学の教授を退官しなければならないようなシステムでは何の意味もなさないのである。民間企業での経験を活かしながら教壇に立つ。そのような講義であれば学生も興味を示し大学での勉学意欲も変化するのではないだろうか。


よって、日本においても「産」「学」「官」の三者が一致協力をし、21世紀の日本に本当に役立つことを、また、役立たせる人材の育成つくりを行うことをしなければならない。
また、英語の授業において英語を日本語に訳すことをしているがそのような西洋編重の授業から脱却すべきである。勿論そのような授業も必要であるが、そ
れよりもむしろ、日本の国にある企業の実態、官庁の実態、を土台にして日本のサイエンスを作るべきである。大学においては何でもアメリカのものを取り上げて翻訳し教えるといった傾向がある。学問の第1は日本の国、日本の実態について教えなければならない。それを判断させる材料として外国の実態を教えるという逆転の発想が必要である。



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