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今求められる国会の機能強化
反町勝夫 アメリカと日本の政治システムを考える

ポスト冷戦のアメリカ政治
中林美枝子氏
LEC東京リーガルマインド
代表取締役会長
反町勝夫
VS 連邦議会上院予算委員会スタッフ
中林美恵子氏


反町
 冷戦が終結して絶対的な対立軸がなくなり、アメリカの力は相対的に強くなっているようですが、アメリカ内部においては、ローマ帝国のような意味において、衰退している面が感じられませんか? 

中林
 世界のリーダーとしてのアメリカの理念は弱くなってきているし、国内でも国民に何を理念として訴えてリードしていくかがわかりにくくなっていますね。

反町
 結局、経済などをテーマにするしかない。

中林
 そこでも何を国民に訴えればいいのかわからなくなっている傾向があります。財政均衡にしても、党の中でさえ意見が割れています。昔から共和党には3つの保守があります。一つは社会的保守。家族の価値を大切にとか中絶反対。二つめは経済的保守。財政均衡、減税を好む。政府は小さくして、人々の自由な経済活動を保証すること。三つめが安全保障の保守です。もともと社会的保守と経済的保守は必ずしも主張が同じではない。その両方の手を繋げていたのが安全保障で、どの保守もソ連という敵に対しては異論がなかった。しかし反共産主義、アメリカのフリーダムを支えるという安保理念が今は薄くなった。今回の選挙で共和党はかろうじて多数党の地位を守りましたが、社会的保守のメッセージはあまり票にならない、2000年の選挙は一体どうしたらいいのかという危機感を持ってきています。かといって民主党がすばらしい案を持っているわけではなく、共和党の理念に近づいた政策プラスせいぜい教育改革しかない。ゴア副大統領も環境、情報産業以外はない。これまで共和党の大統領が多かったのは、世界を見たうえで理念の保守があったからですね。

反町
 アメリカは犯罪対策や教育問題など国内の言わば目先の課題を中心とした議員が選ばれる時代になっているようですね?

中林
 そう思います。内向きになっていますね。

反町
 対外問題と言っても中国が大きな極になるのは、まだ先でしょう。EUは自分たちでまとまっている。日本が経済の面でアメリカの脅威になりそうになれば、それに対して政治がまとまることもあったが、今は日本がこの状態で、それもない。

中林
 世界経済はアメリカがなんとかやっているからもっているようなものです。

反町
 アメリカの経済が崩れれば、世界恐慌に繋がる可能性がある。それが起きた場合、共和党はどのような対策を打つのでしょうか?

中林
 対策は考えていないでしょう(笑い)。予算委員会は恐慌とは言わないまでも 、とにかく財政出動をさせないよう訴えているだけです。98年の財政は700億ドルの黒字です。すると議員は地元に使いたい。クリントンも緊急財政対策として洪水や嵐などの自然災害の被害があったということを理由に、農業を援助しています。今の経済の状態で言えば、黒字が蓄積されて、財政はよくなるだろうと言われています。しかし順調に経済成長が継続するとは限りません。

反町
アメリカの所得が2極分解していると言われていますが?

中林
 今は中間層が豊かになった感覚があります。公定歩合も低く押さえられ、家を購入する際のローンが非常に低い。その他、株価が上がり、物価がほとんど上がっていない。それでリッチになった気がして、消費が増える。   

反町
ただクレジットの購入が多いわけでしょう。

中林
 そうです。個人破産も増えています。それについての議論が今後、もっと出てくるでしょう。破産をしにくくしようという議論も出ています。金融機関の圧力もあります。このままですと、S&Lに続いて、不良債権化するのではないでしょうか。それがアメリカ経済が傾く要因になるかもしれません。

反町
 景気が悪化したとき、アメリカはより国内に目を向けるようになり、対外問題に手が回らなくなる。今後、日本はどのように国の理念をつくっていくか、一層大きな問題となるはずです。

中林
 急がないと、思ったより早く世界不況が来てしまうかもしれませんね。

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