中小企業診断士

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後藤 博の診断士試験 今昔物語

診断士は、昭和27年(1952年)に通商産業省(当時)により中小企業診断員登録制度が創設されるところから始まり、近々では平成17年の法改正による試験制度の変更にいたるまで、日本経済の現状に則した形で診断士が活躍することができるよう制度の見直しが繰り返されています。診断士の業務は、日本経済の基盤ともいうべき中小企業の「経営の診断及び経営に関する助言」を行うことであり、日本経済を下支えする役割は変わっていません。
そこで、『診断士試験 今昔物語』では、診断士受験指導30年の後藤博講師の経験を基に、試験制度や受験生の変遷に見る“診断士の役割の歴史と今後”についてシリーズで語っていただきます。
今年、中小企業診断士受験に挑戦する方、これから勉強を始める方が目指すべき診断士の姿がイメージできるのではないでしょうか。

1. 診断士試験の変遷

LEC専任講師の後藤です。1980年(昭和55年)に2次試験に合格し、診断士受験指導に携わるようになって今年で30年を迎えます。このコラムでは、コンサルタントとしての独立(あるいは企業内診断士としての自立)を目指し中小企業診断士受験に挑戦する方へ、エールを送ると同時に、私の受験指導30年を振り返り、合格や独立のノウハウを伝授しようと思います。

このコラムは3月頃まで連載する予定ですが、まず最初に、中小企業診断士試験制度の変遷について紹介しておきましょう。

中小企業診断制度自体は昭和23年の中小企業庁発足と同時にスタートしました。この頃は、無試験で、主に公務員の方が「中小企業診断員」という肩書きで業務を行っていました。中小企業診断士としての認定試験が実施されるのは昭和38年(根拠法は「中小企業指導法」)からです。ちなみにこの頃の試験は、面接試験のみであったということです。

<第1期>

1次・2次の筆記試験の形態が確立するのは昭和44年からで、それまでの「中小企業診断員」という名称から「中小企業診断士」に変わったのもこの年です。われわれ受験指導に携わるものの視点から診断士試験制度を見た場合、出題内容の特徴でこれまでの診断士試験を3期間に分けるのが一般的ですが、昭和50年代中ごろまでが第1期といえます。この頃の試験は、実務色の強い「現場改善型」の特徴をもっていました。いわば、「すぐ使える診断士」を作ることが目的だったのでしょう。

<第2期>

私が受験した昭和50年代中ごろからが第2期です。この頃から、試験内容は、環境変化に企業がどのように対応していくかを考察させるという「経営戦略型」の特徴を持つようになっていきます。

<第3期>

現在の試験制度の骨格が作られたのは、2001年(平成13年)です。5年後の見直しを経て、現在の試験制度になりました。

以上のような試験制度や試験内容の変化に合わせて、合格のための学習法などに多少の違いが出てきます。
次回からは、<第2期>と<第3期>の試験制度と試験内容とに焦点を当て、有効な学習法や合格者像などを紹介していきましょう。

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2. 1次試験科目

前回に引き続き、中小企業診断士試験制度の変遷について紹介しましょう。

今回からは、「試験科目」(1次試験)に焦点をあてます。私が受験した昭和50年代中ごろからが<第2期>ですが、当コラムではこの頃を「昔」、新試験制度がスタートした平成13年以降<第3期>を「今」と表記することにしましょう。

「昔」の診断士試験は、商業部門と鉱工業部門に分かれており、1次試験は共通科目4科目(「経営基本管理」「財務管理」「労務管理」「販売管理」)と専門科目4科目(商業部門の場合は「仕入管理」「店舗施設管理」「商品知識」「商業に関する経済的知識」)の8科目でした。総合点60%以上の合否基準は「今」と同じですが、この頃は「科目合格制」はなく、一発合格のみでした。新試験制度における「部門の廃止」と「科目合格制」、そして1次のマークシート方式の導入は、受験者像や学習方法などに大きな影響を与えました。この面は改めて考察することにしましょう。

「昔」の1次試験は、合格すると永久資格として認定されます。このため、現在のように2年間での失効という規制が無かったので、2次試験を翌年以降に繰り越すという方がたくさんいました。今でも、「旧診断士1次合格」の資格で2次試験にチャレンジされる方もいます。

ただし、「今」の2次試験内容はすっかり変わってしまい、もう一度1次試験から受験しなおす方が多いようです。旧試験制度で受験者数が圧倒的に多かった商業部門の資格保有者の場合は、「今」の事例IIIの生産管理などは学習経験が無いので「お手上げ」だと言います。一方、鉱工業部門の資格保有者の場合は、「今」の事例IIの小売業やサービス業のマーケティングについては苦手だと言います。

「昔」の鉱工業部門の専門科目4科目は「生産管理」「資材購買管理」「鉱工業技術知識」「鉱工業に関する経済的知識」です。私もそうですが、「昔」は、商業部門に合格しても次の年に鉱工業部門に挑戦する方が結構いました。共通科目は免除されますし、「鉱工業に関する経済的知識」(「今」の「中小企業経営・政策」に引き継がれました)は中小企業白書からの出題ですので商業部門での学習内容とほぼ同じ。というわけで、実質3科目のみ学習すればよいので合格の確率は高かったようです。プロコン(独立診断士)を目指す方は、仕事の間口を広げるため両部門資格保有をねらいました。

「今」の1次試験科目のうち、「企業経営理論」は、「昔」の「経営基本管理」「労務管理」「販売管理」が合体したものです。そしてなんと「今」の「運営管理」は、「昔」の商業専門3科目(「仕入管理」「店舗施設管理」「商品知識」)と鉱工業専門3科目(「生産管理」「資材購買管理」「鉱工業技術知識」)の計6科目が合体したものです。「運営管理」という科目がいかに幅と奥行きの広く深いものかということがお分かりになると思います。

試験制度として大きな変化があったのは、昭和61年の情報部門の創設でした。この制度改革は国の中小企業政策や診断士の業務領域、また、診断士受験者・合格者の変化などと大きな関わりがあるので、次回にもう少し掘り下げましょう。「昔」の情報部門の専門科目は、「今」の「経営情報システム」に引き継がれています。

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3. 中小企業政策の多様化と情報部門の創設

今回は、中小企業政策の変化と診断士制度や受験者・合格者の変化が深く関わっているということを紹介しましょう。

1973年(昭和48年)の第一次石油危機を契機に我が国経済は安定成長期に入りました。中小企業政策は、高度成長から安定成長への転換の中で、生産性向上を図るための設備の近代化や経営規模の拡大等を重視した従来の政策から、産業構造政策として「知識集約化」の方向性が強調されました。これを実現するため、中小企業政策の面でも事業活動の多面的な向上に必要な技術、人材、情報等の「ソフトな経営資源」の充実を図ることが必要とされたのです。ただし、この面の施策が具現化されるのは80年代に入ってからです。

人材面では、80年に中小企業大学校が設置され、経営管理、技術等の研修制度の整備が進みました。中小企業大学校では、診断士試験制度とは別に、公的機関の中小企業支援業務に携わっている方を中心とした1年間の診断士養成コースが設けられました。また、情報面では73年の中小企業情報センターを中心に経営情報の提供サービスが開始され、86年には「情報化対応診断事業」がスタートしました。

中小企業のIT化が愁眉の急だったのです。このような中小企業政策の変化を背景に、1986年(昭和61年)に診断士・情報部門が創設されました。この制度改革は診断士試験や受験者・合格者の動向に大きな影響を与えました。

中小企業政策の変化と診断士制度や受験者・合格者の変化が深く関わっているということを紹介しましょう。

1986年(昭和61年)に診断士・情報部門が創設されましたが、この制度改革は診断士試験や受験者・合格者の動向に大きな影響を与えました。

まず第一の影響は、情報部門診断士を目指して受験者が増加したことです。商業部門や鉱工業部門の診断士資格保有者もこぞって受験しました。診断士資格保有者は情報専門科目(「経営情報管理」「情報システム(生産or流通を選択)」「情報技術に関する基礎的知識」「情報に関する経済的知識」)の4科目のみ受験すればよく、受験しやすかったという事情があります。また、この頃から、鉱工業部門の受験者数が頭打ちになったところをみると、それまで鉱工業部門を受験しようと考えていた方が情報部門への転進を図ったということもあったようです。

さらに、情報処理技術者などのIT関係の専門家もかなり受験しはじめました。情報処理技術者第1種以上合格者は、「情報技術に関する基礎的知識」が免除になり、旧特種やアプリケーションエンジニア・システムアナリストはさらに「情報システム」が免除になりました。上級情報処理技術者試験を制覇したソフトウエア技術者には,大きく二つのキャリアパスが考えられます。さらに技術力を磨こうとする人は技術士へ,経営やコンサルタント力を磨こうとする人は中小企業診断士(情報部門)へという流れがあったと思われます。この面での変化は、合格者の業種構成にも大きくあらわれました。この頃から、金融機関に次いで、IT関係勤務の方が急増することになります。

もう一つの影響は、受験者の低年齢化が加速したことです。それまでは、50歳代後半から60歳代前半の受験者のセグメントが比較的大きな比重を占めていましたが、情報部門の受験者は20歳代から30歳代までの方が中心です。ただし、時代の先端を行く情報部門を制覇しようと、診断士資格保有者の中にはかなり高齢の方もチャレンジされました。私の受験指導クラスにも、診断士であれば誰でも名前を知っている大先輩(なんと80歳代の方です)が一番前の席で受講されていました。その「診断士魂」に、なんともいえない感動を覚えました。

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4. 中小企業診断士制度と新試験制度

現在の試験制度の骨格が作られたのは、2001年(平成13年)です。5年後の見直しを経て、現在の試験制度になりました。試験制度の、いわゆる<第3期>です。<第2期>とは受験者像・合格者像、そして合格のための学習法などに多少の違いが出てきます。
新試験制度における「部門の廃止」と「科目合格制」、そして1次試験の「マークシート方式の導入」、2次試験における「中小企業対策」の科目廃止は、受験者像・合格者像や学習法などに大きな影響を与えました。

まず今回は、新中小企業診断士制度の意義について紹介しましょう。
1999年(平成11年)12月の中小企業基本法の改正により中小企業政策は大きく転換し、中小企業を従来の大企業に比して「弱者」として捉えるのでなく、中小企業は機動性、柔軟性、創造性を発揮し、「我が国経済のダイナミズムの源泉」として積極的な役割を担うことが期待される存在として位置付けられました。
この新しい位置づけとなった中小企業が経営革新など新たな取り組みを積極的に行うためには、中小企業が不足する経営資源を確保できるよう国が支援することが重要であることから、2000年(平成12年)に中小企業指導法が改正され、新たに中小企業支援法が成立しました。

中小企業支援法においては、民間事業者の専門能力を最大限に活用し中小企業の経営資源確保を支援する中小企業支援事業の実施主体としての都道府県等中小企業支援センターが整備されるとともに、中小企業の経営診断の業務に従事する者として、中小企業診断士が法律上で新たに位置づけられました。

中小企業支援法により、中小企業診断士が法律上に新たに位置づけられたことを受け、新たな中小企業診断士に求められる役割として、(1)民間経営コンサルタントとして中小企業を全社的視点で経営について診断・助言すること、(2)「民間事業者を活用して行う」公的な事業としての中小企業支援事業に「民間事業者」として参加し、中小企業の利益の最大化を図るために行政、専門家との橋渡し役となることが提示されました。

つまり、旧制度では中小企業診断士は公的診断(公的機関が行う中小企業診断)を担当するものを選抜するという位置づけ(国家試験ではない)だったのですが、新試験制度では、民間の経営コンサルタントの能力認定試験(国家試験)ということになりました。
診断士の中でも、ここで初めて、自分の資格は国家資格ではなかったのかと気づいたという、笑えない話もあります。

このような背景のもと、試験制度にも大幅な改定が施されました。
1次試験の科目構成で、「経済学」や「経営法務」といった科目が新たに設置されたのは、「MBA(経営学修士)」のカリキュラムを参考にしたのでしょう。
特に、「部門制の廃止」は、受験指導に携わっていた私達にとって大きな驚きでした。
また、「昔」の試験制度で資格取得した中小企業診断士からは、「この試験制度では、診断士としての専門性が薄れるのではないか」という危惧の声が上がりました。
結局、診断士試験は、「行政、専門家との橋渡し役」であり「中小企業を全社的視点で経営について診断・助言する者」としての能力をみる試験、という性格に大きくかじを切ることになったのです。

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5. 新試験制度:1次試験

現在の試験制度の骨格が作られたのは、2001年(平成13年)です。5年後の見直しを経て、現在の試験制度になりました。
2001年当初の試験科目と配点・試験時間は以下の通りで、現在の科目構成などとは少し違っていました。

経済学・経済政策(100点、60分)、財務・会計(100点、60分)、企業経営理論(200点、120分)、運営管理(100点、60分)、経営法務(100点、60分)、新規事業開発(100点、60分)、経営情報システム(100点、60分)、中小企業経営・中小企業政策・助言理論(200点、120分)、計1000点。

5年後の見直しの際に、配点や試験時間が変更されましたが、もっとも大きく変化したのは試験科目構成で、「中小企業経営・中小企業政策・助言理論」の中の「助言理論」と「新規事業開発」が廃止されたことです。
「新規事業開発」は、新中小企業基本法で新たに設定された「創業支援」や「経営革新支援」という中小企業診断士の役割に沿う形で作られた科目でした。試験内容は、「企業家の役割と企業家活動」「事業機会の発見と評価」といった理論部分と、「ビジネスモデルの構築」「ビジネスプランの作成と評価」といった実践部分に大きく分かれていました。
この科目が廃止された最大の理由は、他の科目とのダブリが大きかったためだと思われます。「企業経営理論」と「財務・会計」の応用問題が多く、独自の出題領域は企業家精神の部分だけでした。
現在は、経営革新(イノベーション)に関する問題が「企業経営理論」で毎年必ず出題されているという形で、「企業経営理論」に吸収されてしまいました。

5年後の見直しの際に、「中小企業経営・中小企業政策・助言理論」の中の「助言理論」が廃止されました。

新試験制度では、前述したとおり、中小企業診断士は民間の経営コンサルタントの能力認定試験ということになりました。
「助言理論」は、プロコンとしての中小企業診断士の役割に沿う形で作られた科目でした。
試験内容は、「コンサルティング理論」(問題の発見・解決の立案、変革の推進)といった理論部分と、「コンサルティングスキル」(カウンセリングの知識と技法、コーチングの知識と技法)といった実践部分に大きく分かれていました。
コンサルタントは問題の発見・解決能力があっても、それがクライアント(依頼者)によって実施されなければ十分に仕事をしたとはいえません。クライアントの現状や理解能力などに応じてコンサルティングの焦点やレベルを操縦していく必要があります。じっくりとクライアントの悩みを聞いたり(カウンセリング)、むやみに難しい理論による解決策を押しつけるのではなくクライアントの「気づき」を引き出したりすること(コーチング)が有効なコンサルティングにつながります。
この面から、私はとても重要な試験科目だと思っていました。

この科目が廃止された理由は、試験内容で「企業経営理論」や「新規事業開発」とのダブりがあることもその一つですが、特に、実践部分が筆記試験になじまなかったということが最大の理由でしょう。
2次口述試験は、この面の補強を狙って設置されたものと思われます。

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6. 新試験制度:2次試験

現在の試験制度の骨格が作られたのは、2001年(平成13年)です。5年後の見直しを経て、現在の試験制度になりました。まず、それまでの旧試験制度の2次試験について紹介しましょう。

旧2次試験は、筆記のみであり、3部門(商業、鉱工業、情報)に分かれて実施されていました。1日で4科目各80分という形態は新試験と同じなのですが、特徴的なのは科目構成で、3部門に共通の「中小企業対策」という科目があったことです。
この科目は、新試験制度・1次試験の「中小企業経営・中小企業政策」の筆記試験版にあたります。たとえば、旧制度の最後の2000年(平成12年)は、次のような出題でした。

  • 600字記述:「新中小企業基本法」の基本理念と政策体系の特徴を旧法との比較で記述。
  • 200字記述:「エンジェル税制」「中小企業大学校」など4つの事項の中から、2つを選択し説明。

「中小企業対策」については、中小企業政策についての深く正確な知識が必要で、苦手な科目であるとする受験生が多かったのですが、逆に、事例問題は何点取れるかわからないが、この科目は学習目標が明確で「努力すれば確実に点が取れる」ということで、1年間じっくりと学習し(あるいは完全に暗記し!?)90点レベルを確実に狙えるようにした受験生も多くいました。このタイプの受験生の合格確率は高いものでした。
この試験戦略は、現在の科目構成からいえば、「事例IV」に対する学習上の位置づけや対策の仕方に似ているといえます(暗記型学習は無理ですが)。「財務・会計」を味方につけると、合格へぐっと近付くといわれる所以です。

旧試験制度下の2次事例問題は部門別に3問出題されました。
旧制度の最後の2000年(平成12年)の商業部門は、次のような出題でした。

  • 事例I:洗剤メーカーの特約卸売業の在庫管理、リテールサポートの具体的な内容、IT活用の具体的方策。
  • 事例II:家具小売業の商品戦略・サービス戦略、大型店対策のための具体的方策、立地する商店街の活性化のための具体的方策。
  • 事例III:卸売団地に立地するタオル・シーツ卸売業のインタネット販売への進出に伴う商品戦略、価格戦略、共同化の具体的方策。

いずれの事例も、中小企業診断士として流通業を支援していくためのオペレーションレベルの実践的・専門的な知識と問題解決力が問われており、1次試験の専門科目についての知識プラスアルファーが要求されています。
このため、1次知識を補充する業種・業界知識が必要で、この面から、多少、関連業界の知識を保有している受験生が有利だったのです。また、この専門的知識を学習していく過程で、将来のプロコンとしての自分の進むべき道が見えてきたという受験生もいました。

部門の垣根がなくなった新試験制度の事例問題をみると、オペレーションレベルの実践的・専門的な知識と問題解決力の比重が小さくなり、トップの戦略的意思決定にかかわる領域の出題比重が大きくなって、ある意味では1次知識との連動性が相対的に高まったといえます。 前述したように、診断士試験は結局、「行政、専門家との橋渡し役」であり「中小企業を全社的視点で経営について診断・助言する者」としての能力をみる試験、という性格に大きくかじを切ることになったのです。「組織・人事」事例が独立して設置されたり、「財務・会計」事例の「投資の意思決定問題」の比重が高まったのは、このような事情を背景としています。

次回からは新試験制度下の有効な学習法と、皆さんの受験にヒントとなりそうな先輩の学習と独立の軌跡を紹介します。

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7. 新試験制度と合格者像
学習プランは射程距離を長く〜自己実現を目指して

新試験制度下で、短期間で合格しコンサルタント(診断士)として活躍している方々の共通点をあげるとすれば、次の3つでしょう。

1 受験指導校を有効に活用して勉強した

受験指導校の通学講座は、2次試験における「思考プロセス」を養う際に最大の学習環境を用意することができます。また、初めて中小企業診断士としての学習をする受講生にとっては、学習計画の作成や進捗管理などのカウンセリングを活用することができます。そして、講師との接触を通じて、コンサルタントとしての生きかたを学ぶこともできます。

2 1次から、2次を意識して勉強した

1次はプレ2次、つまり1次試験対策は2次試験対策の準備段階であるということです。2次試験が「製品づくり」ならば、1次試験はその「部品づくり」と考えてよいでしょう。すなわち、2次試験という最終製品の設計をまずイメージしながら1次試験という部品の設計を同時に行います。そして、1次試験対策という部品を作りこんでいるときに同時に2次試験という製品への適用を常に意識しているということです。
なぜこの学習法が必要なのかについては2つ理由があります。一つは、1次試験から2次試験までの期間が短いことです。二つ目は、2次試験の専門性が薄れ、1次試験と2次試験の連動性が強まったことです。

3 資格取得後の独立(あるいは、企業内でのスキル活用)を意識して勉強した

たとえば、小売業の新業態開発や工場のIT化など、コンサルタントとして専門的に研究してみたいと感じられる領域を探しながら勉強することです。日々の勉強は、単に1次や2次試験に合格するためということだけではなく、コンサルタントとしての生きかたを発見し創造していくプロセスでもあるのですから。

最後に、これまで受験や独立を支援させていただいた数多くの受験生の中から、皆さんの受験にヒントとなりそうな、特に印象に残っている先輩Aさんの学習と独立の軌跡を紹介しましょう。

現在、Aさん(20代女性)はコンサルティングファーム(銀行系シンクタンク)でプロジェクトリーダーとして活躍しています。
資格取得後すぐにコンサルタントとして独立する方は少数派です。実際の独立までのステップは、Aさんのように、自己啓発としての学習→企業内資格活用→(コンサルティングファームなどへの)転職→独立開業という形が一般的です。

食品メーカーに勤務していたAさんは、会社の女性職員の処遇について不満を感じていました。また、いくつかのコンサルティングファームの求人に応募しましたが、ほとんど書類選考ではじかれていました。ところが資格取得後は、応募したコンサルティングファームの書類選考の段階では、全くはじかれないということに自信を持ったと言います。いわゆる「箔がついた」ということです。そして数社の内定を得た後、現在の会社に転職しました。
コンサルティングファームでの最初の仕事は、中小企業庁から委託された「中小企業白書」の報告書作成でした。それまでは勉強の対象として読んでいた白書を書くという立場になったのです。

Aさんは、現在の仕事に非常に満足していると言っています。この転職によって満たされたAさんの自己実現へのステップを「マズローの欲求階層説」風に分析すると次のようになるでしょう。
まず、給料は2倍になり(生理的・安全安定欲求)、今の職場は性別による処遇の差は無く、仕事を通じた仲間として男性職員と付き合え(社会的欲求)、そしてなにより仕事自体にやりがいと誇りを持っている(自我・自己実現欲求)と感じています。

Aさんは新試験制度の1期生で、1次はストレート、2次は翌年に合格しました。Aさんは、「それまではいろいろな面で自分に対して自信が持てていなかった。ところが、診断士受験の学習プロセスを通じて自己変革できた」と言っています。
受験指導講師の目から見て、Aさんが2次学習のパフォーマンスではっきりと力が付いてきたと思える時期がありました。この頃のカウンセリングで、Aさんは、「1次の企業経営理論などのテキストやノートを見直して今までになく面白く感じ、1次の知識が2次事例の問題解決に有機的に繋がっていくのを実感できた」と言っています。2次では、この感覚が大事ですね。
Aさんは講師の質問に対し、最初は目を伏せて答えていましたが、後半は、しっかりと講師の目を見て答えるようになりました。このような受験生と付き合い、ともに合格を喜び合えることが受験指導講師としての一番の生きがいです。

ご愛読ありがとうございました。

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