
1次試験は例年8月第1週目の土日2日間で実施され、7科目700点満点のマークシート選択方式で出題されます。
1日目の科目は、「経済学・経済政策」「財務・会計」「企業経営理論」「運営管理」の4科目です。2日目の科目は、「経営法務」「経営情報システム」「中小企業経営・中小企業政策」の3科目になっています。
このうち、1日目の「企業経営理論」と「運営管理」、2日目の「中小企業経営・中小企業政策」は中核的科目に位置づけられ、90分で実施されます。それ以外の科目は60分です。
では、以下に科目別の出題内容をご紹介します。
経営上の意志決定を行う基本となるマクロ経済指標の動きを理解します。また、経営戦略やマーケティング活動の成果を高め、積極的な財務戦略を展開するために、ミクロ経済学の基本的知識を身につけます。
消費者の行動分析(価格が下がればモノを買う人が増える、価格が上がればモノを買わない人が増える)から需要曲線を、企業の行動分析(価格が上がればモノを売る企業が増える、価格が下がればモノを売らない企業が増える)から供給曲線を導き出し、価格をシグナルとして需要と供給が一致する理想的な市場(完全競争、神の見えざる手)の成立条件を学びます。さらに、市場メカニズムが上手く働かないケース(不完全競争)等を学びます。
消費や投資といった経済変数で国民経済をモデル(数式)化し、国民経済全体が均衡するプロセス(ケインズ型乗数モデル)を学びます。さらに、乗数モデルに金融市場(貨幣市場)を導入する(IS-LMモデル)ことで、財政・金融政策といった経済政策をめぐる学説上の争点(マネタリスト対ケインジアン)等を学びます。
景気予測や市場調査に役立つ指標に関して、定義、出所、扱い等を学ぶことで、予測に対する理解を深めます。
財務会計の知識は企業経営の基本であり、財務諸表等による経営分析は企業の現状把握や問題点の抽出のためには欠かせないポイントです。また、他社の買収等を行うケースを想定して、投資評価や企業価値の算定等に関する知識についても身につけます。なお、2次試験の事例4(財務・会計)に直結する重要な科目となっています。
企業外部への情報開示を目的として、会計制度等にもとづいた貸借対照表(B/S:バランスシート)、損益計算書(P/L:プロフィット・アンド・ロス)、キャッシュフロー計算書(CF:キャッシュフロー)の作成方法を学びます。また、計数面から企業実態を把握するため、利益面(収益性)、短期の資金面(流動性)、長期の資金面(安全性)等の経営分析の手法を学びます。
企業内での意思決定のために、直接原価計算の考えにもとづいた損益分岐点分析を中心に学びます。ここでは、何個の製品を売れば損益がバランスするのか、追加発注を受けるべきか、断るべきかといった問題や利益計画の策定についての理解を深めます。
投資プロジェクトの選択(投資評価)や企業買収に必要な企業価値の問題について理解を深めます。ここでは、将来のお金の価値を今の価値に戻すといった現在割引価値(NPV:ネット・プレゼント・バリュー)の考え方や株価の理論値の求め方を学びます。
資金面以外の経営に関する基本的な理論の習得は、経営に関する現状分析や問題解決、新たな事業への展開等に関する助言を行うにあたって必要不可欠です。企業経営理論では、経営戦略論・組織論・マーケティング論の3分野についての幅広い知識習得が求められます。また、診断士試験の中核的科目に位置付けられており、90分の試験となるのも特徴です。なお、2次試験の事例1(組織・人事)、事例2(マーケティング・流通)に直結する重要な科目でもあります。
自社を取り巻く環境(外部環境:政治、経済、規制、市場等…)と経営資源(内部環境:ヒト、モノ、カネ、情報等の内部資源)を考慮(SWOT分析)し、長期的かつ一貫性を持って策定された目標(ビジョン、ミッション、ゴール)を経営戦略といいます。
ここでは、(1) 製品と市場のパターンに着目したアンゾフの成長戦略、(2) 多様な製品を抱える(多角化)企業の資源配分のための枠組み(フレームワーク)であるPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)、(3) 市場における自社の地位や競合関係(リーダー、チャレンジャー、フォロアー、ニッチャー)に着目したポーターの競争戦略、(4) 自社の持つ得意分野やノウハウといった競争力の源泉(内部資源の強み)に着目したコアコンピタンス、(5) 多角化やM&A(企業買収)のメリット(シナジー)・デメリット(カニバリーゼーション)等を中心に戦略論のフレームワークを学びます。
また、経営戦略と自社内の他の戦略との関係(上位概念、下位概念、戦術)や戦略の種類(事業戦略、機能戦略)等についても学びます。
経営戦略で定めた目標(ゴール)に対し、経営資源であるヒト(人材)を束ね(組織形態、組織デザイン、集権化、分権化)、従業員の能力を100%発揮できるようにするのが組織(人事)戦略です。
ここでは、上司のあるべき姿(リーダーシップ論)、人材の配置・管理(人的資源管理)、従業員のやる気(処遇と評価のリンク、モチベーション管理、目標管理)、能力開発・教育訓練等を中心に学びます。また、労働基本法などの労働関連法規もここで学びます。
組織論では、停滞した組織の活性化(組織開発、組織文化)もテーマとして扱うことから、2次試験の範囲に含まれる助言理論にも関連しています。
経営戦略で定めた目標(ゴール)に対し、消費者の欲求(ニーズ)をキャッチ(市場調査)し、商品(製品)を売るための仕掛けを企画・実行する(マーケティング・ミックス)のが、マーケティング戦略です。
ここでは、マーケティング戦略の目標を達成するため、プロダクト(製品)、プライス(価格)、プロモーション(販売促進)、プレイス(場所、物流)の4Pの操作方法を中心に学びます。また、競争の厳しい今日において、市場ニーズを踏まえた(マーケットイン)商品(製品)開発や、成熟した市場におけるブランドの役割、流通構造・歴史(流通系列下、小売パワーの台頭、製販同盟、卸の中抜き)等についても学びます。
生産および小売業・卸売業・サービス業に係るオペレーションの管理に関する全般的な知識を学びます。生産管理と店舗・販売管理の2分野から構成されています。また、診断士試験の中核的科目に位置付けられており、90分の試験となるのも特徴です。なお、2次試験の事例3(生産・技術)に直結する重要な科目でもあります。
高品質(Q:クオリティ)、低コスト(C:コスト)、短納期(D:デリバリー)を実現するため、投入→加工→産出のプロセスをいかに効率化(生産性:産出÷投入)するかを学びます。そのため、製品の特徴に応じた生産方法(受注生産、見込生産)や設備の配置方法、生産計画や在庫管理の手法等について学びます。また、廃棄物の扱いや最先端素材・技術といった今日的トピックも学びます。
店舗外の消費者への訴求→店舗内へ誘導・回遊→購買のプロセスに従って、商店街→個別店舗→店舗内レイアウト→商品の陳列・照明方法を学びます。さらに、商品(仕入)計画であるマーチャンダイジングを学びます。また、商圏、出店調査、各種法規等についても学びます。
現場のオペレーションの効率化を支えるCIM(コンピューター・インテグレーテッド・マニュファクチャリング:生産系)やPOS(ポイント・オブ・セールス:流通系)等について仕組みや運用方法を学びます。
企業経営に関係する法律、諸制度、手続き等に関する実務的な知識を身につけます。中小企業診断士として、必要に応じて弁護士等の専門家を活用するため、または中小企業との橋渡しを行うための、基本的かつ最低限の実務知識を身につけます。
定款→設立→各種届出といった事業開始時の手続きプロセス(会社設立と登記)を始め、事業形態(個人、株式)の選択や変更、会社運営のための必須知識(株式会社の機関、株主総会の手続き、議決権の効力)を学びます。さらに、企業の成長ステージ別に必要な知識(誰にどれくらい株を割り当てるかといった資本政策、企業買収・合併、廃業するにあたっての会社整理等)等を学びます。
ユニークなアイデアと大量の資金で、急速な成長を目指すベンチャー企業は、その資金需要を借入(間接金融)でなく、投資(直接金融)によってまかないます。ここでは、株式公開(IPO)の手続き、ディスクロージャー(情報開示)、証券取引法等について法的な側面から理解を深めます。
あわせて、企業は誰のものかといった企業統治(コーポレート・ガバナンス)の問題についても理解を深めます。
契約の種類(売買契約、請負契約等)、物権や債権、その種類と効力等、企業間の日常の取引に不可欠な知識を学びます。さらに、公正かつ自由な競争を確保するための独占禁止法、故意・過失にかかわらず製造者の責任が問われる製造物責任法(PL法)、販売促進に関わる景表法(不当景品類及び不当表示防止法)等の、企業活動を行うにあたって、企業が守らねばならない消費者保護関連の法律を学びます。
中小企業やベンチャー企業のユニークな製品、技術、ビジネスモデルなどの知的所有権、企業の営業秘密(トレードシークレット)を守るためのさまざまな法律を学びます。
近年は経営のあらゆる場面において、情報システムの活用が必要不可欠になっていることを背景として、情報通信技術に関する知識を身につけます。また、情報システムを経営戦略や企業革新と結びつけ、活用できるように理解を深めます。なお、2次試験において、例年1題以上情報関連の出題がなされていますので、2次対策としても重要な科目です。
コンピューターがどんな原理(スイッチのオン・オフによる2進法、OS:オペレーションシステム、ソフトウェア、プログラム言語)で動くのか、どのような装置(ハードウェア、デバイス)で構成されているのかを学びます。また、経営の意思決定を支えるシステムの技術的基礎(DB:データベース、情報検索機能、集中処理から分散処理)やIT革命を支えるLAN(ローカル・エリア・ネットワーク)、インターネットといったネットワークの仕組みを学びます。
ここでは企業経営理論で学んだことを踏まえ、意思決定の支援ツールである戦略情報システムについて、システムの狙いや特徴を学びます。また、システム開発→導入→運用→評価のプロセスにもとづき、システム導入をめぐるさまざまな問題(全社的な合意形成のプロセス、コンサルタントの果たす役割、ビジネスプロセスの見直し)や運用の評価(成功要因と失敗要因)等について学びます。
技術的な知識としては、システム概要を表現するための技法(DFD:データー・フロー・ダイヤグラム)やシステム開発の手法等について理解を深めます。また、システムトラブルの減少(信頼性、可用性の向上)、不正アクセス等からの情報の保護(安全性)、コスト面からシステムの活用度を評価する手法(効率性、費用対効果、TCO:トータルコスト・オブ・オーナーシップ、BSC:バランスド・スコア・カード)といった観点についても幅広く理解を深めます。
企業経営の実態や各種統計等により、経済・産業における中小企業の役割や位置づけを理解するとともに、中小企業の経営特質や大企業との相違を把握します。また、国や地方自治体等が講じている各種の政策を、成長ステージや経営課題に合わせて活用できるように理解を深めます。なお、診断士試験の中核的科目に位置付けられており、90分の試験となるのも特徴です。
1999年に改正された「中小企業基本法」では、中小企業を「新しい産業を産み出し、市場競争を促進する存在として、日本経済のダイナミズムの源泉」と位置付けています。
ここでは中小企業白書にもとづき、中小企業を取り巻く環境と中小企業の現状(中小企業経営)についてのさまざまな課題を学びます。なお、試験で出題されるのは前年度の白書からがメインとなります。(平成19年の本試験では、平成18年(2006年)版の白書から出題されます)
中小企業白書で明らかにされた現状にもとづき、中小企業をバックアップする政府(中小企業庁等)の各種支援策(中小企業政策)について学びます。なお、試験で出題されるのは、当該年度の最新施策総覧に基づいての出題がメインとなります。(平成19年度の本試験では、平成19年度版の施策総覧から出題されます)
2次試験は例年10月中旬の日曜日に実施される筆記試験と、12月中旬の日曜日に実施される口述試験に分けられます。
筆記試験は1次試験7科目の合格者のみが受験することができます。出題形式は4科目で、それぞれの企業についての概要が書かれた問題文(与件文)がB5版で2〜3ページほどあり、その内容について4〜5問程度の設問がなされます。1問あたり100字前後での記述(文字数は指定されています)が求められ、全体では600字〜800字程度となります。
なお、口述試験は、2次筆記試験合格者のみが受験することができます。
中小企業診断実務の事例問題「中小企業の診断および助言に関する実務の事例」が4題出題されます。また、「経営革新・改善」「新規事業開発(既存事業の再生を含む)」等の観点から、上記4題はそれぞれの事例テーマで出題されます。
組織(人事を含む)を中心とした経営の戦略および管理に関する事例です。近年の事例1では、組織・人事といった企業の内部資源の有効活用だけではなく、ビジネスモデルや事業戦略面などについても問われることが多く、与件や設問の解釈も困難な傾向があります。
マーケティング・流通を中心とした経営の戦略および管理に関する事例です。小売業やサービス業など、身近な業種を中心に出題される傾向があります。与件文が4事例中最も長文で情報が多岐に渡るので、情報の集約力・把握力や因果関係を明確に記述する力が求められます。
生産・技術を中心とした経営の戦略および管理に関する事例です。製造業を中心に出題される傾向があります。生産現場になじみの薄い受験生にとっては苦手意識が高い事例でもありますが、1次の運営管理で学んだ生産管理等の基本的知識を駆使すれば対応は困難ではありません。
財務・会計を中心とした経営の戦略および管理に関する事例です。例年必ず財務諸表を元に経営分析を行う問題が出題されています。その他、アカウンティング・ファイナンスの両面からの応用力が問われる傾向にありますが、1次の財務・会計で学んだ基本的知識を駆使すれば対応は困難ではありません。
中小企業の診断および助言に関する能力について、筆記試験の事例などをもとに、個人ごとに約10分間の面接試験(3対1)がおこなわれます。
筆記試験で問われた4事例からランダムでさまざまな内容についての質問が行われます。基本的には、2つの事例から2題ずつ(計4題)で10分間というケースが多いですが、1事例から4題もしくは4事例から1題ずつといった形式もあります。いずれにせよ、受験生は一切の資料等を参照することはできませんので、事前に全ての事例について、内容まで理解しておくことが必要です。なお、合格率は99%以上ですので、基本的には選抜する試験ではなく、コミュニケーション能力の確認といった意味合いが強いといえます。