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第38回社会保険労務士試験 講評

全体を通して
選択式

選択式は、社会保険に関する一般常識が難問であった。問題文の記載や数値などに疑義の残る部分もあり、正答するのは困難であったと思われる。論点としては労災保険法の制定に伴う社会保険の動向であり、単純に歴史を問う問題よりも一般常識らしさがあった。また、労災保険法が紛らわしい選択肢があり、短い文章の中に5つの空欄があったため戸惑った方も多いと思われるが、内容自体は奇をてらったものではない。そのほかでは、労働基準法及び労働安全衛生法が空欄の5つがそれぞれ独立した問題となっており、近年にはない傾向であり、幅広く知識が問われた。

上記3科目以外は、比較的平易な問題であった。

択一式

労働基準法では、派遣労働者や出来高払制その他の請負制の労働者に関する肢が多く見受けられた。労働安全衛生法が難問であったため、これらの肢の正誤の判断が得点をとる鍵となったであろう。その他の労働科目については、例年どおり他の科目にくらべれば高得点が期待できるものであった。社会保険科目は、健康保険法が例年どおりの難易度であった。厚生年金保険法は難解であったが、何とか4点は確保しておきたい。国民年金法は、比較的平易な問題が多かった。一般常識は、労務管理その他の労働に関する一般常識が難しく、社会保険に関する一般常識で点数を稼いでおきたいところである。



合格ライン
選択式
各科目3点以上かつ合計27点以上であれば合格圏内である。
2点救済があるかどうかについては、選択式の問題の中で、かなりの受験生が苦戦した「社会保険に関する一般常識」「労働者災害補償保険法」が確実である。ただし、1点救済はない。
また、「労働基準法及び労働安全衛生法」も2点救済の可能性がある。
なお、選択式の問題の難易度や択一式の得点分布を考慮すると、他の科目に救済はない。
択一式
各科目4点以上かつ合計43点以上であれば合格圏内である。
3点救済に関しては、「労働基準法及び労働安全衛生法」の可能性が高く、次に「厚生年金保険法」が考えられる。
なお、他の科目に救済はない。


科目別講評
選択式
  1. 労働基準法・労働安全衛生法

    労働基準法のB肢については附則で経過措置が設けられているが、問題文の「労働基準法施行規則第24条の2の5の規定により」とする文脈から、また、附則による経過措置を選択する必要性が問題文の記載にないため、原則どおりの規定である(4)を選択するのが適当であると判断した。

    労働安全衛生法は、選択肢に紛らわしいものが多く、設問が2つに分かれていたため、例年よりも難解であった。
  2. 労働者災害補償保険法

    労働者災害補償保険法は、業務上の疾病及び通勤による疾病の範囲からの出題であり、類似した語群の中から適切な肢を選ぶ形式のものであった。過去の本試験(平成13年度本試験《択一式》問3)で問われた論点でもあり、設問の論点に着目していた受験生にとっては全問正答も容易かったものと思われる。しかし、初めて目にした受験生にとっては選択肢が似通っているだけに、A〜Eのすべてにおいて正答の肢を絞りきることはできなかったのではないだろうか。他の科目に比して、受験生間で大きく得点の差が生じるものと思われる。

  3. 雇用保険法

    雇用保険法は、賃金日額及び基本手当の日額の算定方法に関する出題であったが、いずれも条文からの基本的事項の出題であり、全問正答も十分可能であったと思われる。

  4. 労務管理その他の労働に関する一般常識

    労務管理その他の労働に関する一般常識は、労働者派遣についての出題であった。A〜Eの空欄のすべてが基本的事項であり、かつ、労働者派遣については過去において論点として頻出していたため比較的解答し易かったと思われる。多くの受験生が自信を持って正答できたのではないだろうか。

  5. 社会保険に関する一般常識

    社会保険に関する一般常識は、社会保険制度の沿革に関する出題であり、戦後の社会保険の状況を問うものであった。設問の文脈と選択肢から、Bの「国民健康保険」、Cの「健康保険」及びDの「標準報酬」の3つは正答したいところであるが、残りのA及びEについて正答するのは困難であった。全体として難易度の高い問題であったといえる。

  6. 健康保険法

    健康保険法は、一般保険料率及び介護保険料率に関する出題であったが、近年択一式で繰り返し問われてきた論点でもあり、基本的な事項を問うものであった。A及びCは数字を問うものであり、近年の傾向を踏襲しているといえる。

  7. 厚生年金保険法

    厚生年金保険法は、再評価率の改定に関する出題であり、オーソドックスな出題であった。A〜Eいずれの空欄も通常の学習で十分対処が可能である。3問は正答しておきたい。

  8. 国民年金法

    国民年金法は、調整期間に関する出題であった。近年にはめずらしく、ほとんど条文どおりの出題であり、厚生年金保険法と同様、A〜Eとも通常の学習で十分対処が可能である。厚生年金保険法同様、3問は正答したいところである。

択一式
  1. 労働基準法・労働安全衛生法

    労働基準法は、ほぼ昨年と同程度の難易度の出題であった。問1〜問3は平易な問題であり、問4及び問6が難問であった。特に問4のC肢は細かい知識を問う問題であり、自信を持って正答を選択することができた受験生は少なかったであろう。特徴としては、昨年ほどではないが、引き続き判例に関する問題が多かったことが挙げられる。

    労働安全衛生法は全体的に難問であったが、問9及び問10は法改正部分に力を入れて学習した受験生であれば、何とか正答を導き出せたのではないだろうか。3問中1問は正答しておきたい。
  2. 労働者災害補償保険法

    労働者災害補償保険法は、例年に比べ平易な問題であったといえる。問2及び問4については、各肢ごとの論点につき個別に正誤を判断するものでなく一の論点につき適切な肢を選ぶという形式であるが、いずれも重要な論点であり、得点を稼いでおきたいところである。このレベルの問題であれば7問中5問は正答したい。

    労働保険徴収法は、難問奇問がなくオーソドックスな問題であった。受験生の多くが全問正答できたものと思われる。
  3. 雇用保険法

    雇用保険法は、難易度としてはほぼ例年なみの問題であったが、問2については、離職証明書の記載に関する実務的な問題であり、やや難しかったと思われる。この問2を除いては、問1・問4に事例を問うものがあり、一見紛らわしい肢も見受けられた。このような選択肢に惑わされなければ、高得点を獲得できたものと思われる。7問中4問は正答したい。

    労働保険徴収法は、いずれも基本的な事項からの出題であり、全問正答も難しくはなかったのではなかろうか。

  4. 労務管理その他の労働に関する一般常識

    ほとんどの問題が平成17年版労働経済白書及び労働経済数値からの出題であり、労働法規からの出題はわずか4肢であった。驚かれた受験生もかなり多かったと思われる。労働経済数値の中には過去のものも含まれており、昨年の問題と比較すると難易度は上がっている。各問の正解肢だけを並べてみると意外と単純な論点が並ぶように思われるが、試験会場において限られた時間で正解肢を選択するのは困難であろう。問2・問3・問4のいずれかの問題で、1点でも多く得点しておきたいところである。

  5. 社会保険に関する一般常識

    社会保険に関する一般常識は、問6〜問10のすべてが基本的な事項を問う問題であり、全体的に易しかった。老人保健法、介護保険法、国民健康保険法及び確定拠出年金法と、いずれも主要な法律からの出題であり、労務管理その他の労働に関する一般常識が難問であったことを考えると、ここでしっかりと点数を稼いでおく必要がある。

  6. 健康保険法

    健康保険法は、問5のC肢・問10のC肢のように基本的な条文からの問題が正解の肢となる問題もあり、全体的に難解ではなかったと思われる。問2や問8には権限の委任に関する肢があり、これらの肢については迷った方もいるであろうが、それでも全問を通じて6点くらいは得点できるレベルであると思われる。できればさらに1〜2点の積み上げを望みたい。

  7. 厚生年金保険法

    厚生年金保険法は、細かい規定に関する出題も多く、例年どおりの難しさであったと思われる。通常の学習では対処できない記述もあり、かなりの受験生が解答に苦慮したのではないだろうか。一方で問5・問9・問10などは確かに難しい肢も含まれているが、正解肢は比較的判断し易い。これらの問題を確実に正答し、何とか4〜5点を確保したいところである。

  8. 国民年金法

    国民年金法は、厚生年金保険法に比べれば、取り組みやすい問題が多かった。問6のB肢など受験生があまり学習しない部分からの出題も見受けられたが、その他の問題については、正解肢がはっきりしているものが多く、得点することはさほど難しくはないであろう。厚生年金保険法に比べれば高得点が期待できる。少なくとも7点は取っておきたい。