通関士の一日、国際物流業者の営業マンの一日
(3) 通関士のある一日
今回は、大田区大森に事務所を構える通関業者に勤務する通関士のある一日を紹介します。
この地域は、東京税関の大井出張所【大井埠頭とその周辺の保税地域を管轄】、本関【主として青海埠頭を管轄】、芝浦出張所【主として品川埠頭を管轄】が管轄しています。
この地域での海上貨物の通関業務が仕事です。【東京港周辺に事務者がある通関業者の場合、上記三税関が管轄する埠頭が近接しているため、どの埠頭に船荷が入っても通関を請け負うのが一般的です。】
○月△日(月曜日)
- 9:00
- セーフ!何とか9時に間に合う。
- 9:15
- 上司が私を含めて3人の通関士に今日の午前11時受理締切の申告書の審査分を配布する。
NACCSで申告すると、区分1【申告と同時に許可になる】、区分2【申告書受理後に書類審査を行う】、区分3【申告書受理後に書類審査に加えて検査を行う】のどれかに振り分けられる。
区分1以外は申告書を税関に提出して審査してもらうことになるが、その受理締切時間が11時、14時、16時と決まっており、その時間に提出できるように申告書を作成し審査、申告を行う。
私の分【今日は輸入のみ】はいつもの庭石用の小石と、とうがらし、あとは区分1になりそうな機械の部品の予備審告。たいしたことは無いな。チャチャッと審査を済ませて申告する。
小石は区分3、とうがらしは区分2、その他は区分1、予想通り。配布票【税関に提出する書類に付けておくと税関の審査担当者が名前を書いて返却してくれる】を書いて、小石は本関行き、とうがらしは大井出張所行きの箱に入れる。
- 10:15
- 手持ちの面倒な線引きに取り掛かる。
線引きというのは申告書を作る時の最初の作業で、インボイス上で貨物ごとに税番を書き、税番ごとに定規で分け、計算していく作業のことです。
申告欄数が多くなりそうな自転車の部品と、ジャケットの暫八の線引きに取り掛かる。
面倒くさい書類は朝が一番捗る。【暫八とは、関税暫定措置法8条のことで、日本から輸出した材料をもとに外国で作った衣料品を輸入する際に行う、減税をともなう面倒臭い輸入申告のこと。材料を輸出する時と、輸入する時にそれぞれ減税手続が必要。輸入の方が減税計算書や、減税明細書など書類も多く煩雑である。】
- 11:50
- 線引きが大体片付いた所で、昼休みの時間。
【会社は、外食する人が店が混む前に入れるようにと昼休みは11:50〜12:50の設定】
- 12:40
- ちょっと昼寝していたら税関から電話。嫌な予感。もしかして・・・・
やっぱりX線検査場【東京都江東区青海の夢の島付近にあるコンテナX線検査場で、X線検査の結果異常があれば併設の開被検査場でコンテナから貨物を出して検査することとなる】から開被検査立会い要請の連絡だ。
一時半検査開始との事。
皆、食事したばかりで気が進まないようなので,ここは自分が行くしかないか、と重い腰を上げる。カメラなど準備を整えて、いざ出発!
城南島の海底トンネル【事務所がある大森からX線検査場に行くルートは、大井競馬場の前、大井税関の前を通り過ぎ、野鳥公園で有名な城南島に入ると海底トンネルがあり、さらにもう一つの海底トンネルを越えていく。その先がX線検査場である。混んで無ければ、車で約30分くらい】が混んでいて、13:30に間に合いそうに無いので、事務所に電話して検査場に一報入れてもらう。
- 13:40
- 何とか10分遅れで青海の大型X線検査場に到着。税関職員と作業員のおじさん達が首を長くして待っていた。今日は麻薬検査犬も来ている。ほどなく開被検査開始。インボイスに記載されているもの以外の貨物が出てこないように願いつつコンテナから取り出される貨物を見守る。今日の貨物はなかなか立派な家具。
税関職員が、中にあった箱を開けていいか?と聞いてきた。開けてみると、インボイスのどこを見ても記載の無い貨物が出てきた。事務所に電話して、営業担当者から荷主に問い合わさせる。理由書とインボイスの訂正を至急入手してライン【この貨物の輸入申告書を提出した窓口】に走ってもらい、何とか申告書を訂正の上許可してもらい一件落着。【なぜそういう事態になったのかという理由書を書いて税関に弁明し侘びを入れて納得してもらえれば、申告書を訂正して許可を得るという運びとなる。】
- 16:00
- 気付けばこんな時間。でも開庁【税関の執務時間外に事務をしてもらうこと】にならなくてよかったと胸をなでおろす。ようやく帰路(もちろん直帰じゃありません。事務所に帰るのです。)につく。車を発進させると携帯に着信あり。
だいたいこの時間の電話は・・・・ 「帰りに今日カット【輸出許可証、船積書類を船会社に提出する期限の日のこと。】の大井出張所に申告したプラスチックの輸出許可が切れていないから様子を見てきてくれ」との電話。【本当に人使いが荒いんだから。】最近大井出張所の輸出部門にめちゃくちゃうるさいK統括【統括とは、ライン各部門の長で、役職は課長。普段はわれわれ業者とはあまり接点がないのだが、このK統括だけはやたらと首を突っ込んできて許可を阻止する。】が異動してきて、今まで何の問題も無かった貨物の輸出許可が切れにくくなった。また、あの統括とやりあうのかぁ・・・
(他の誰か行ってくれよ)と内心思いながら、快く「了解!」と返事をする。
- 16:15
- 大井出張所を目前に再度事務所から連絡があり、「さっきの貨物は輸出許可になったから 真っ直ぐ帰ってきていいよ」とのこと。ラッキー!ホーっと一息。
- 16:35
- 事務所に戻る。やはり月曜日。営業から書類が大量に来ている。週の始めから残業かぁ・・・トホホ・・・・。
このようにして、私の新しい一週間が始まったのであった。
いかがでしたか。多少なりとも船で運ばれてくる輸入貨物の通関現場の様子をお伝えできたのではないかと思います。
今後も時々は通関の仕事にも触れて行く予定です。
(2) 国際物流業者の営業マンの一日
次に、通関士試験で勉強した知識を生かして物流業者の営業部門で働いているSさんの一日をご紹介しましょう。
Sさんは、国際的な貿易の仕事がしたかったので某大手物流会社に就職。都内の支店に配属され、輸出貨物の手配及び営業を行っている。自分の仕事の幅を広げるため、入社3年目に通関士の資格を取得。
- 9:00
- 出社。
海外現地法人などからの問合せ事項などをチェック。
- 10:30
- 通関課から今日輸出申告している貨物についての問合わせ:「貨物が、輸出貿易管理令に該当していないか確認したい」とのこと。
- 輸出者の担当に電話で確認し、該当法令をチェック。
- 11:00
- Aメーカーへの見積もり等の作成:依頼されている、航空機と船舶で貨物をベトナムに輸出する際の運賃の見積もりとベトナムの通関事情についての資料の作成。
- 12:00
- 昼食。
- 13:00
- S商社を訪問:S社がドイツから輸入した機械について、修理のためドイツに送り返したいとのこと。修理の後、日本で再び輸入する際に、関税が免除できるかどうか相談を受ける。
- 関税定率法11条により、免税にはならないが、減税できる旨を伝える。併せて、出荷の際の必要な書類についてアドバイス。通関課に問い合わせるまでもなく、通関士試験で培った知識が役立つ。
- 14:00
- Tメーカーとの打ち合わせ:T社はロンドン向けの5トンの貨物について、今日から50日後迄にロンドンの客先のところに届けたいが、輸送期間をなるべく短く、しかし、輸送費をなるべく安くしたいとのこと。
- カナダのバンクーバーまで船を使い、バンクーバーから航空機でロンドンまで輸送することを提案。
- 16:00
- 翌日申告分の準備:航空会社への予約、書類の作成などを行う。
- 16:30
- 中国の現地法人に電話:緊急貨物について、空港到着後迅速に輸入通関及び配達ができるよう事前の手配を依頼。
- 17:00
- 翌日輸出申告分の書類のチェック。
- 19:00
- 今日輸出許可が切れた分について、関係書類を海外現地法人に送信。
- 20:00
- 帰宅。
このように、営業で働いていても、通関の知識は不可欠です。顧客から通関について質問を受けたとき、その場で答えられれば信用は増します。まして、通関士という肩書きがあれば、営業の大きな武器になります。
(1)通関士の一日
通関士は一体どんな仕事をしているのでしょうか?
物流会社の通関課で通関士として働いているTさんの一日をご紹介しましょう。
Tさんは、学生時代に通関士の資格を取得し、某大手物流会社に就職。
千葉県成田市の成田空港地区内の通関課に配属され、通関士として現在航空貨物の輸入通関の業務を行っている。
○月△日(月曜日)
- 8:30
- 出社。
輸入通関書類の作成に取り掛かる。本日の申告予定は約40件。電機部品、自動車エンジン、IC等が中心だ。月曜は申告件数が多い。土・日は税関が原則休みであり、その間に空港に到着した貨物の通関を一斉にやらねばならないのである。本日中に輸入許可を税関からもらう場合、原則13時半までに申告しなければならない。できあがった書類は、通常、自分で審査することはできず(ミスをしていても気づかない可能性が高いので)他の通関士に審査してもらう。逆に、こちらも、他の通関士や従業者が作成した書類を審査する。
- 11:00
- 他の通関士から、書類を一件返された。仕入書上、値引きがあり、輸入者に確認のうえ、数量値引きとして作成したが、再度確認せよとのこと。「数量が3個しかないのに、そんな値引きするか?」ということが再確認の理由である。すぐ、輸入者に電話、数量値引きに間違いないとのことで一件落着。数が少なくてもそういうことはあるらしい。
- 11:30
- 顧客のA百貨店から電話があり、急遽これからハンドバッグの申告を3件してほしいとのこと。お客様なので断れない。昼食は後回しに決定。昼休みも書類の作成を続ける。途中、同じ課の従業者が作成した書類や、他の通関士の作成した書類の審査も行う。何とか、13時20分頃に本日分の申告完了。
- 13:30
- これで一段落だ、昼食に行くかと同僚と話していると税関から電話。午前中に申告したICについて、価格が高すぎるのではないか、とのこと。税関は個々の品目について、妥当な輸入価格を載せた価格範囲(プライスレンジ)表というものを持っており(当然、部外秘)、これより高いか安いと、理由を求めてくる。高い理由を答えないと、許可がもらえない。すぐ輸入者に連絡するが、担当者が外出しており、すぐには分からないという。
- 14:00
- 検査場から電話。申告後、税関検査になった貨物(ガラスのコップ)を開けてみると、いくつか破損しているらしい。すぐにカメラを持って、検査場へ。税関職員、保税地域の職員と共に、破損した数を確認。保険処理のために写真も撮る。この後、減税手続をしなければならない。
- 15:30
- 減税手続完了、そしてICの価格の件も、輸入者から連絡があり、特注品のため高いと判明。すぐ税関に報告し、許可をもらう。これで問題はなくなった。
- 16:00
- 空港内のレストランでやっと食事。その後、翌日の申告に備え書類作成
- 21:30
- 帰宅。
以上は忙しい月曜日の場合です。週末はこれほど忙しいわけではありません。
このように、通関士は、輸出入をする際に必要な、税関への申告及び許可を得なくてはならない手続の全てを行い、また、税関と輸出入者の間に立って輸出入者の利益を守る重大な職責を担っているのです。
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