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Top Interview
2 中国の弁護士事務所の現状


 現在、中国には、約10万人の弁護士、約9,000の弁護士事務所が存在します。弁護士事務所の組織形態としては、以前は(1)国家資本による事務所のみが存在していましたが、現時点では、これに加えて、(2)各パートナーが無限責任を負うパートナーシップ制の民営事務所、(3)一定の事務所資産を形成して責任財産とし、対外的には有限責任のみを負う合作制と呼ばれる民営事務所の3種類が弁護士法によって認められています。国策としても政府機関直属の弁護士事務所を組織改正して民営事務所化する方 向に向かっており、今後はパートナーシップ制事務所を中心とする民営事務所が中心となっていくものと思われますが、現時点の主流は依然として国家資本による弁護士事務所ということができますし、また民営化の傾向にしても国策として行われている点が特徴的です。この点、戦後間もなく司法試験制度が発足し、弁護士による自治を認められ、国家に対立する存在として基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命づけられた日本の弁護士とはスタートラインが異なるということができるでしょう。小生を含


めて企業法務に従事している弁護士のマインドには日中間で大きな違いは見出せませんが、弁護士が公共的な活動を行う場合(弁護士の仕事はすべて公共的であるという規範論はここではテーマとしない)や対政府関係の紛争処理等の側面において、このような理念的な相違が影響してくる可能性は否定できません。
 他方、事務所の大型化という面では中国は日本よりも進んでおり、これも国策としてではありますが、事務所が大型化して規模の利益を追求すべきことが奨励
されています。そもそも弁護士事務所の設立のためには3人以上の弁護士が共同経営者として名を連ねることが法律上の要件とされています。これは、中国では組織という意味を有する「単位」という概念が重視され、個人で経済活動に従事するという観念が希薄であることとも関係していると思います。本質論から法人化が認められず、弁護士徒弟制度ともいうべき個人経営を中心において法制度その他が出来上がっている日本とは、やはりスタートラインが異なっており、ある意味では中国の方が洗練されている


ということもできるでしょう。小生自身も日本の他の多くの弁護士の例に漏れず、一匹狼的な独立性を追求して弁護士になったという面はありますが、中国では余り評価される考え方ではないようです。
 この大型化とも関連しますが、中国の弁護士事務所の中には国内の他の地域に支店を開設して全国的規模でサービスを展開する志向が芽生えてきています。国内の支所を認めない日本の弁護士法と異なり、中国においてはこの面における法的障害はありません。この広大
な国土にあってはこのような全国展開の必要性も高いので、主として企業法務を手がける事務所を中心としてこのような動きは益々強まると思います。尤も国土が広大であるだけに、地方毎に法律運用が異なったり、法律意識に格段の差違が存在したり、また紛争解決については地方における関係(コネクションというような意味で中国では頻繁に用いられています)が重要であったり、といった中国的風土とどこまで折り合いをつけていくかという課題があることも事実です。なお、大型化の一貫として、中国の弁護士


事務所の国際化も進みつつあり、1993年にある弁護士事務所のニューヨーク支所が設立された他、中国の弁護士事務所の海外支所設立という現象も徐々に出現してきており、日本においても外国法事務弁護士資格を有する中国の弁護士が独立開業したという事例が存在します。

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