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2000.vol.1
特別寄稿
近づくアースデイ2000
――世界5億人が行動へ
株式会社インサイダー代表 高野 孟 氏

 2000年という世紀の変わり目の年の4月22日,米国シアトルに本拠を置 く「アースデイ・ネットワーク」の呼びかけに応えて,全世界で5億人と予 想される人々が,過ぎ行く環境破壊の世紀を振り返りつつ,来世紀に真に持 続可能な社会を実現するための様々なアクションを一斉に繰り広げる.その 日を半年後に控えてすでに160を超える国々の約3000のグループが行動への参加を表明しており, アースデイ2000はかつてない規模の地球一周的イ ベントとなって“地球市民”と なるとの共通意識を育むものとなろうとしている.
 日本でも,何らかの形でこれに参加する人々は2000万人に及ぶと予想さ れており,それはアジアで同時アクションを起こす1億人の有力な一角をな すだろう.もちろんそれらの人々は一堂に会する訳ではなく,それぞれの地 でそれぞれの考えで自分らにとって可能なささやかなアクションを起こすの だが,それだけの人々が“環境”のことを想いつつ世紀を超えようとするこ との意味は計り知れず


重い.そして日本の場合とくに,その想いは,3ヶ月 後の7月沖縄サミットの機会に沖縄から平和への希求を世界に発信しようと する行動に繋がっていくことになる.
 1人1人が「世紀末をどう跨ぐのか」が問われる中で,アースデイは1つ の巨大な触媒となる可能性を孕んでいると言える.


●70年から始まる
 アースデイは1970年に米西海岸から始まった.60年代後半の若者反乱の 熱気がまだ続く中,体制の堪え難さに対する反逆の行き先の1つが環境問題 であることを見抜いたゲイロード・ネルソン上院議員が4月22日をアース デイと設定して行動を起こすことを呼びかけ,当時シリコンバレーのスタン フォード大学の全学学生自治会委員長だったデニス・ヘイズがそれに呼応し て,極めて短期間の内に全米の様々なグループをネットワークした.その日 は,ニューヨーク5番街が 人で溢れて車両通行止めになるなど,全米で2000万人以上が様々なイベントに参加,それがきっかけとなって米政府が環境保 護庁を新設し,また議会が大気浄化法を採択することになったと言われたほ どの影響力を持った.その意味でアースデイは疑いもなく,68年世代,米国 で言う「いちご白書」世代の産物である.
 環境問題への関心が大きく広がった1990年には,「地球のために行動しよ う」という米国からの呼びかけで世界141カ国,2億人が参加するアースデ イ1990が


行われ,初めて地球規模のイベントに発展し,この時に日本でも 全国約200カ所で多彩なイベントが組まれ,環境問題に取り組む様々なグル ープのネットワークが広がった.  それ以後も年々積み重ねられてきたそうした流れを受け継ぎつつ,まさに 世紀の変わり目に相応しい規模と広がりのものにして,現実に社会の制度や 法律を変えていく力にしようというのが,今回のアースデイ2000である.


●世界の動き
 アースデイ・ネットワークの代表は,今なおデニス・ヘイズで,その下に 「国際評議会」が設けられている.レスター・ブラウン米ワールドウォッチ 研究所長,グロ・ハーレム・ブルントラント国連世界保健機構事務局長,ジ ュリア・カラピラス=メキシコ天然資源庁長官,ポール・アーウィン米人間 科学協会代表,ノーア=ヨルダン王妃,エミル・サミル=インドネシア前環 境大臣,ドミニク・ボイネット仏環境大臣,アレクセイ・ヤブロコフ露環境 政策センター代表といった人士が名を 列ねたこの評議会に,日本からは広中和歌子参院議員が加わっている.
 世界事務局によると,すでに各国から「驚くべき反応」が寄せられており, すでに160カ国の約3000グループから自分らの行動プランが集まってきて いる.日々膨れ上がるその広がりは,とうてい印刷物でカバーしきれるもの でなく,ホームページで重要部分については英仏西ポ露中の6カ国語で紹介 されている(http://www.earthday.net/worldwide/).


 ほんのいくつかの例を挙げれば,アフリカのガボンでは,地元の環境専門 家たちがアースデイ2000に向けて全国の若者を対象とした環境教育ネット ワークと環境監視システムを作ることを計画している.南アフリカでは「世 界エネルギー情報サービス」が原発反対の国際キャンペーンに取り組み,「環 境監視グループ」が気候変動や健康に関するセミナーを組織している.イギ リスのグローバル・ビジョン・トラストはアースデイ2000に世界中で提供 できるように「持続可能性:グロ ーバルな視点からの未来」と題したマルチメディア教育映像ソフトを制作している.ロシアでは「聖なる地球ネットワ ーク」が国内1200の環境NGOにアースデイ2000への団結を呼びかけている. マレーシアではサバ州図書館がその日に全国で子供らに物語を聞かせるイベ ントを行う.キューバでは政府と「自然の友」などの市民団体がその日まで に100万本の植林を行うキャンペーンを開始している……など.


●日本の取り組み
 日本のアースデイ2000を推進しているセンターは,須田春海=市民運動 全国センター代表がまとめ役を務める「アースデイ2000企画・運営委員会」 で,これには日本野鳥の会,環境ジャーナリストの会,地球の友ジャパン, 全国青年環境連盟,環境自治体会議など,環境問題専門の有力グループのほ か,生協,主婦連,自治労,大企業の社会貢献室や環境部なども幅広く参加 している.この委員会を支援するのが,歴代の環境庁長官など9人の「顧問団」とアグネス・ チャンはじめ多彩なタレント・文化人数十人からなる「キ ャンペーン委員会」である.
 日本の推進者たちが重視しているのは,(1)90年代を通じて取り組んでき た「地球環境の10年」運動によって,我々を取り巻く環境はいくらかでも マシになったのかどうかをテーマごとに点検し,現状を再確認した上で, (2)2000年末までに解決・実現を目指す具体的な“重点目標”を定めて各グループで共有化し,(3)特にアジアとの連携を強めて,4月22日


には「1億人のアジア同時アクション」を巻き起こす――ことである.
 (1)に関しては,すでに各有力グループの共同作業で,90年代を通じて環 境的に見て何が改善され何が悪化したかをチェックした報告書『地球環境は よくなった?/21世紀へ市民が検証』(コモンズ刊,1200円)が刊行され, 10月22日には東京・四谷の司法書士会館で出版記念のシンポジウムが開か れる.目次を見た限りでは,「びんビールの比率は4割減,70億缶がゴミに」 「年間700万トンの残飯
が出ている」「乗用車の台数は58%増え,鉄道投資は道路の5%」「EUは減り日本は増え続けるCO2の排出量」……など,どう も余りいいことはなさそうである.
 企画・運営委では,すでに始まっている各グループのアクションや今後の プランをホームページで紹介しているが(http://www.earthday-j.org/), それを見ても参加形態は思い思いの多様性を示している.
 例えば,日本フィルハーモニーは今年


末のベートーベン第9交響曲のコンサートを「アースデイ2000参加公演」と銘打って,12月18日東京芸術劇場 を皮切りに6回にわたり公演する.茨城県の3つの環境グループはアースデ イに向けて「環境コネクションいばらぎ」を組織し,県内のNGO,自治体, 企業など300団体に呼びかけて環境情報のネットワークを作ろうとしている. 早稲田大学のサークル「環境ロドリゲス」はキャンパス周辺の商店街と連携 してゴミ・ダイエットのための「エコサマー・イン・早稲田」を開催した, 等々.  この早稲田のイベントは,4年前から開かれていて,今年は8月29日に 行われた.目玉企画は“ラッキーリサイクル作戦”で,これは特注のマシン にペットボトルや空き缶を1本投げ入れるごとに1回抽選が出来て,当たれ ば商店街の割引券やエコ文具が貰えるという趣向で,この日のためにボトル や缶を溜め込んで持参した家族連れが列をなして楽しんだ.大学生が環境問 題を通じて地元の商店街と手を組んで何事かをなすというこの形は,東京大 学農学部や明治学院大学戸塚キャンパスなどにも広がりつつ


あり,これもま たアースデイへの参加の1つの形である.
 企画・運営委の構成メンバーである「環境自治体会議」に加盟する自治体 は増えており,9月に新たに2つの町が加
わって会員自治体が50に達した.
そのような広がりを背景に8月には同会議の関連組織として環境政策研究所 も発足,地域の環境調査や政策立案をサポートしていく態勢を強化した.


●7月沖縄への流れ
 2000年4月のアースデイは,7月沖縄サミットの機会を捉えて沖縄から世 界に平和のメッセージを発しようという計画と,ごく自然に繋がっていく. というよりも,7月の沖縄の平和行動もまたアースデイへの参加の1つとな るのである.
 アースデイ日本の機関誌9月号は巻頭主張で「2000年7月,沖縄を平和の 花で埋めよう!」と,要旨次のように訴えている. 「日本は武力不行使の崇高な憲法理念を持ちながら,世界有数の軍隊を維持 し,さらに沖縄はじめ日本中に米軍
基地がある.日頃,平和な生活の中に埋 没し,軍隊も基地も戦争も忘れて,沖縄を視野の外に置く,そんな私たちに 世界は絶好のチャンスを提供してくれる.2000年の沖縄サミットである」
 なぜアースデイが沖縄に繋がるのかと言えば,人間と自然の共生を求める 環境主義者からすれば,それ以前にまず人間と人間,民族と民族,国家と国 家が共存することなくしては,人間と自然との共生などあるはずもないから である.「環境の世紀は,紛争の世紀に終止符を打


たない限り,幕を開けな い」と,アースデイ機関誌は書き,「沖縄を世界中の花で埋めるキャンペー ンはどうか」と提案している.
 他方,アースデイのキャンペーン委員でもある沖縄ミュージシャンの喜納 昌吉は,来年7月に第4回のニライカナイ祭と平和音楽祭を大々的に開くこ とを計画している.すべての大砲と銃を花と楽器に
置き換えることを提唱して精力的な平和アクションを展開している喜納は,「来年の夏はみなさん沖 縄にきて下さい」とアピールしている.彼の計画は,ホームページ (http://www.ryukyu.ne.jp/~champloo/
niraikanai/index.html
)にある.


21世紀の主な予定(文頭数字は月,●は不確定,一部未確認)●4者協議の役目
国内==============================

<2001年>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
1,21世紀の初日の出
1,1府12省庁への中央省庁再編実施
1,裁判所の判決文など書類をすべて横書きに統一
1,自動車交通情報未来展(大阪)
1,JR東日本がICカード式改札機を導入
1,東海道「宿駅制度」開設400年祭(静岡、1年間)
1,「世界の子どもの平和像」除幕式(広島)
3,サッカーくじ発売
3,日産が村山工場と日産車体京都工場を閉鎖
3,司馬遼太郎記念館完成(東大阪市)
4,情報公開法、家電リサイクル法が施行
4,「遺伝子組み替え」使用製品の表示義務づけ
4,男子の厚生年金支給開始年齢が61歳に
4,「ユニバーサル・スタジオ」オープン(大阪)
4,「鳥取環境大学」設立(鳥取県・市)
4,水木しげる会館オープン(鳥取)
5,東アジア競技大会(大阪)
7,21世紀未来博覧会(山口県阿知須町)
8,日本航空50周年
10,興銀、第一勧銀、富士銀行が共同持株会社を設立
10,宮崎駿アニメ美術館完成(東京都三鷹市)
11,成田空港の暫定滑走路(2180m)完成
●全公立学校をインターネット接続(政府計画)
●高齢者雇用・就労のための調査プロジェクト実施
●外交官試験を廃止し国家公務員試験と統合
●副大臣制導入
●サマータイム法施行
●都銀・地銀10行がコンビニ5000店舗でATM開始
●海のディズニーランド「ディズニーシー」オープン
●黒沢明記念館開館(佐賀県伊万里市)

<2002年>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
3,新首相官邸が完成
3,日産2万1000人削減期限
3,大間原発着工?(青森県)
4,小中学校が完全週休2日制に
4,文部省「新学習指導要領」スタート
4,住友、さくら銀行が合併
4,三井、日本、興亜の損保3社が協同持株会社設立
6,日韓共催のサッカーW杯開幕
9,日中国交正常化30周年
●ダイオキシン排出量を97年比9割削減(政府計画)
●宇宙開発事業団がデータ中継技術衛星を打上げ
●原爆死没者追悼平和祈念館オープン(広島)

<2003年>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
●行政手続インターネット化の基盤構築(政府計画)
●飛行船で成層圏温暖化ガス採取・観測(政府計画)
●宇宙開発事業団が月探査衛星打上げ
●東海道新幹線「品川駅」開業
●新型転換炉「ふげん」廃炉(福井県)

<2004年>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
4,男子の厚生年金支給開始、62歳に
●建機・農機など特殊自動車の排ガス規制

<2005年>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
1,阪神・淡路大震災から10年
3,中部国際空港オープン
3,愛知万博
4,女子の厚生年金支給開始、61歳に
7,東北電力の東通原発稼働(青森県)
7,日本原燃の核燃料再処理工場稼働(六ヶ所村)
●中部電力の浜岡原発5号機稼働(静岡県)
●燃料電池、自動車・住宅などに実用化(政府計画)
●超高速インターネットを全国民が利用可能に(〃)
●神戸新空港オープン
●日本の労働力人口6717万人でピーク(経企庁予測)

<2006年>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
●諫早湾の干拓工事完成

<2007年>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
7,電源開発の大間原発稼働(青森県)
10,関西新空港2本目の滑走路運用開始
●日本の総人口1億2778万人でピーク(厚生省推計)
●エイズ・ワクチン開発(科技庁予測)

<2010年>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
●大量輸送旅客機、太陽光発電、知能ロボット、超高層ビル解体技術、
 CO2処理技術実用化(経企庁予測)
●国内テレビのアナログ放送打ち切り
●日本の65歳以上老年比率22%、寝たきり老人170万人に(厚生省推計)

<2020年>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
●通信衛星利用自動車、月面研究基地、ウィルス治療薬、
 自動翻訳システムが実用化(経企庁予測)


国際==============================

<2001年>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
1,フォードとGMがカーラジオ向け有料の衛星放送開始
1,米大統領就任式
4,村山政権提案の「アジア歴史資料センター」開設
5,アジア五輪評議会理事会・総会(青森)
7,2008年夏季五輪開催地決定(大阪市が立候補)
8,世界移植者スポーツ大会(神戸)
10,水銀国際会議(熊本県水俣市)
●ギリシャが欧州統一通貨に参加
●ハリウッド映画「鉄腕アトム」全米公開
●世界一高いビル「上海環球金融センター」完成(460m)

<2002年>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
1,欧州統一通貨が市中で流通始まる
2,英エリザベス女王が戴冠50周年
2,冬季五輪(米ソルトレイクシティ)
9,小沢征爾がウィーン国立歌劇場の音楽監督就任
9,障害者インタナショナル世界会議(札幌)
9,アジア競技大会(韓国釜山)
●ASEAN自由貿易地域を創設
●国連環境開発特別総会(アジアで開催)
●ヒトゲノムの解読作業完了?

<2003年>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
1,冬季アジア競技大会(青森県)
3,世界一高い「台北国際金融センター」完成(508m)

<2004年>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
7,NASA土星探査機「カッシーニ」が土星周回軌道に
8,夏季五輪(アテネ)
11,日米欧の国際有人宇宙ステーション完成
11,21世紀初の米大統領選
●米国が化学兵器廃棄
●オランダが唯一の原発を閉鎖
●インドネシアが初の原発稼働
●メルボルンに世界一高いビル完成(560m)

<2005年>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
●米仏のスーパーコンコルドが初飛行
●独ダイムラー・ベンツが電気自動車発売
●中国の最新鋭国産戦闘機F10が実戦配備
●香港ディズニーランド完成
●東アジア競技大会(マカオ)

<2006年>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
2,冬季五輪(トリノ)
●ドイツで時速500キロの超高速リニア鉄道が開通

<2007年>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

<2010年>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
●APECの先進国の域内貿易・投資自由化期限
●スウェーデンの原発12基廃棄の目標期限
●オゾン層破壊がピークに?
●中国が空母配備?

<2020年>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
●世界人口80億人を突破(国連推計)
●飢餓人口半減の目標期限(食糧サミット合意)
●宇宙旅行が観光事業に(世界観光機構予測)


2000年へ
――新世紀への最後のステップ
 2000年は新千年紀の最初の年であるよりもむしろ20世紀最後の年であり, この366日間に我々がどれほどのことをなし得るかで,この国の21世紀へ の射出角度が決定される.
 政治のレベルでは,戦略とビジョンが最も必要とされる時に,それとは最 も縁遠い,数の力に頼るばかりの“頭のない鯨”的な自自公政権が生まれて しまったという99年の残したパラドックスを解消できるかどうかが焦点で ある.横山ノック=大阪府知事が破廉恥罪で辞任して2
月初旬に府知事選が行われる展開となったため,1月通常国会冒頭解散・2月総選挙に小渕恵三 首相が打って出る可能性は小さくなった.府知事選を(例えば堺屋太一=経 企庁長官を候補にして)自自公で戦って勝てる自信があれば,その勢いに乗 って総選挙も……ということになるが,今のところその計算は成り立ってい ない.野党側が(例えば中坊公平=整理回収機構社長を押し立てて)民主党, 社民党から共産党までが反自自公・反ノックで足並みを揃えれば,十分に勝


つ可能性があり,その場合総選挙での自自公の負けは余計に激しくなるから である.
 といって,小渕が解散・総選挙を先延ばしすればするほど,それが彼の政 権の終わりになる公算が大きくなる.つまり自自公は新年を通じて墓穴を掘 り続ける宿命にある.とはいえ,民主党や共産党も21世紀のこの国と社会 のあり方について明確な展望を打ち出している訳ではなく,世紀末に相応し い理念力のある政権を作る見通しは明るくない.
 経済的レベルでは,84兆円という空前の規模の予算が「6月には効果を現 す」(宮沢蔵相)という政府判断の合否が問われるが,前々から指摘してい るように,これは虚偽のテーマである.世界最高水準の1人当たりGDPを生 みながら金巡りが悪いのは,100年を経た中央官僚統制を通じての富の再配 分機能が壊れているからであって,不況のせいではない.大企業・中小企業 を問わず,立ち行かないところが続出しているのは,官僚統制に従属して既 得権益を守ろうとする


企業・業界と,それを当てにせずに自立して世界的競争と環境変化に立ち向かおうとするそれとの間で,熾烈な構造変革戦争が起 きているからで,不況のせいではない.消費が伸びないのは,すでに世界最 高の1人当たり消費と貯蓄を実現して,人々の意識が消費の量を増やすこと よりも質を上げることに向かっていることの反映であって,不況のせいでは ない.「不況」というイデオロギーから脱して,20世紀と共に何を捨て何を 活かすのかの覚悟を整えなければ,21世紀の扉は開かない.  外交的レベルでは,沖縄サミットを,日欧が手を結んで米国の“唯一超大 国”幻想による我が儘を諫める機会に出来るかどうかが勝負.それには普天 間基地の移転問題をこれまでのような扱い方をしていてはダメで,そもそも 在沖縄の米第3海兵師団が何のためにそこに居続けるのかをクリントンに問 いたださなければならない.その実態はほとんど空洞化しており,日本の“思 いやり予算”がなければ存続し得ないし,また米国にとって存続させる必要 もないものである.在日米軍もまた既得権益集団の1つにすぎない.


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