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Top Interview
ポリティカル・アポインティ


反町
水野先生はアメリカで現実の政治を学ばれたわけですが、そのご経験を踏まえて、日本の機構改革をどのようにご覧になっていますか? たとえば、アメリカの大統領制には、政治リーダーが官僚を指名するポリティカル・アポインティ(political appointee・注1)がありますね。
注1)政治リーダーの任命による高級官僚。リーダーシップを発揮しやすく、変化に強い制度。
    水野
    アメリカと日本では政治制度がかなり異なりますから、一概に比較はできませんが、日本の行政システムを改革していくうえで、アメリカで行われているポリティカル・アポインティを研究する価値は十分あると思います。
     日本では官僚が政策を企画・立案して、国会はそれを承認するだけの機関になっているという批判があります。これに対して、今回、国会活性化法案で、大臣の下に副大臣と政務官を置くという制度ができました。私個人としては法案の内容に疑問もありますが、それを別として、法案のそもそもの狙いは、国会議員が政策の企画・立案の段階から役所に入る。それも大臣というトップだけではなく、複数の副大臣、政務官という形で入って、企画・立案の段階から政策を作り、それによって国会が行政府をコントロールするということです。
     その点でいえば、アメリカのポリティカル・アポインティは高級官僚そのものを任命するわけです。国民で選ばれた大統領が行政府官僚をコントロールできるという意味において、日本の副大臣・政務官制度よりも、いっそう民意が反映される制度といえます。
反町
ただ日本の場合、議院内閣制との兼ね合わせがありますね。大統領制のもとではポリティカル・アポインティをとらないと、大統領の意思が徹底しない。またアメリカ大統領の任期は2期8年までですから、自らの意思を徹底するにはスピードが要求されるということもあるのではないですか?
    水野
    その通りです。ただ日本でもポリティカル・アポインティを研究するべきだと思うのは、例えば、大使です。これは特別職で、現行法でも民間から登用することが法的に可能で、現にいくつか民間人登用の実例があることはあるのですが、主要国の大使ポストは外務省OBの天下りポストとなっているのが現実です。駐米大使は事実上、外務事務次官経験者が到達する最高ポストです。栗山さん、村田さん、斉藤さんと代々そうです。ところが、アメリカから来る歴代の駐日大使を見れば、アマコストさんこそ外務官僚的なキャリアの持ち主ですが、あとは、現在のフォーリーさんにしても、その前のモンデールさん、アマコストさんの前のマンスフィールドさんにしても、政界の実力者です。そういう方々のほうが当然、中央政界とのパイプも太いし、登用のインパクトもあるでしょう。
反町
現行法のまま、日本でも行えるのだから、考慮すべきだと。
    水野
    かつては語学力にしても、対外的な知識にしても、外務官僚を任用する意味があったでしょうが、これだけ国際化が進んでいる時代、とくに日米関係などを考えると、そのようなポストをただ外務官僚の天下り先にしていて、果たしていいのか。アメリカでも名が通っている著名な財界人であるとか、国際感覚をもった民間人を大使に任命することは現行法でもできるのですから、ポリティカル・アポインティ導入の手始めとして、民間人を大使に起用するというようなことを積極的に行っていくべきではないでしょうか。

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