住民参加型の政策形成、民間型の組織改革

 国と自治体とが従属関係から対等・協力関係となるとともに、自治体が自ら決定した政策が、当該地域の命運を左右する時代が到来した。公共インフラ、住宅、教育、福祉など住民に直接係る施策の重要性が再認識され、自治体は真に住民の利益にかなった政策形成が求められている。情報公開、住民参加型の政策決定、行政評価は、住民からの行政ニーズを迅速・的確に反映させるためのシステムとして、ほとんどの自治体で実践されている。
  また、プロジェクト制の導入などフラット化した組織制度、能力主義を基調とした人事評価制度など、民間における経営手法を採用し、行政サービスの向上を目指す自治体も増えている。ソフトな構造の組織であれば、様々な住民のニーズがワンストップで適切に把握され、より柔軟な政策形成プロセスが誕生することとなり、結果 として住民参加を促進することにつながるメリットがある。

政策形成を担う、自治体職員の能力向上がカギ


 このような現状において、地方自治が一層発展していくためには、自治体職員の政策形成能力の向上が不可欠である。特に首長部局においては、NPM(キーワード参照)の導入に従って、例規作成などの行政法務、行政相談、予算執行、人事・組織管理を民間サービス的発想の下で行うという抜本的な意識改革と実務能力が求められている。それに即応した職員研修の実施に、今、大きな期待がかかっている。



KEYWORD

NPM(ニュー・パブリック・マネージメント)

新潟大学大住莊四郎教授の定義によると、「1980年代半ば以降、英国やニュージーランドなどのアングロサクソン系諸国を中心に行政実務の現場を通 じて形成された革新的な行政運営理論である」と定義される。
民間企業の経営理論・手法を行政現場へ導入することを手段とし、行政部門の活性化・効率化を図り、行政サービスの質の向上、国民のニーズを的確に反映させることを目的とし、具体的には、民営化・民間委託(料金制)・内部市場・PFIなどの導入、業績や成果 による統制を行う成果主義、現場主義、顧客主義、コスト意識の徹底などが図られることにある。
日本においては、「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」(平成13年6月26日閣議決定)でNPMが取り上げられ、「改革工程表」(平成13年9月21日経済財政諮問会議)においてもその重要性が協議されている。現在、日本の行政にあった新たなコンセプトを組み立てるべく、総務省行政管理局において「新たな行政マネージメント研究会」、同省自治行政局において「NPM研究会」が設けられ、議論が進められている。

参考:「新たな行政マネージメント研究会(第1回配布資料)」総務省行政管理局。

料金制


公共施設等の使用料は地方公共団体の収入になるのに対し、公共施設の管理受託者である関与団体等が自らの収入とする制度。「利用料金制」とも言う。地方自治体業務の民間委託などにおいて、その活用が注目されている。