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通巻196号




<情報自由法改正法の概要>
1944年 東京生まれ
1967年 東京工業大学理工学部卒業
1972年 同大学院博士課程修了(理学博士)
東京都公害研究所
(現・環境科学研究所)勤務の後
1987年 弁護士登録
1993年〜96年 埼玉大学経済学部非常勤講師(環境政策論)
鎌倉市まちづくり審議会委員・鎌倉市緑政審議会委員・葬送の自由をす すめる会副会長・斗う住民と共にゴミ問題の解決をめざす弁護士連絡会
(通称「ゴミ弁連」)会長
 
 弁護士にはそれぞれ得意分野・専門分野というものがありますが、私の場合、ゴミ問題を中心に環境問題を中心に担当しています。
 まず、公害事件と環境事件に分けてお話しますが、公害は被害が顕在化しており因果関係がはっきりしています。一つの例でいうと水俣病公害訴訟がそうです。ですから、損害賠償が可能です。でも環境事件というのは、被害が顕在化する前の段階で蓋然性を立証しなければならず、立証が難しい。その上、損害賠償請求ができない。それを如何に裁判所に理解してもらうか、が問題です。しかしながら、社会的意義が大きいのです。やりがいはあります。
 弁護士が環境問題の事件を担当することを避けるのは、1.労力がかかる2.特殊な知識が必要3.経済的にペイしないという理由からです。
 しかし、1998年4月25日に「斗う住民と共にゴミ問題の解決をめざす弁護士連絡会」(通称「ゴミ弁連」)を30名で旗揚げしたところ、今ではこのゴミ弁連に参加していただいている弁護士は全国で100名を超えました。それだけ、ゴミ問題一つ取り上げても、全国各地でダイオキシン・大気・水質汚染等が問題となっている現状がわかると思います。
 たまたま東京の日の出処分場が有名になりましたが、むしろゴミ問題は都会だけでなく地方の深刻な問題となっていることから、相当関心が高まっているのだと思います。ゴミ弁連は組織の拡大が目的ではないので積極的な勧誘はしていないにもかかわらずこれだけの弁護士が会員となっているのです。
 さて、環境事件についてですが、やはり、仮処分申立が多いです。操業停止や建設工事差止などがそうですが、私は必ずしも仮処分から始める必要性はない、直接本訴に持っていく方がベターな場合もある、と考えています。仮処分でも環境問題については認められるには相当の時間を要しています。最近の事件では、仙台地裁の仮処分で2年半を要していますし、これは日本で一番時間を要した仮処分ではないかと思う横浜地裁小田原支部の6年半というものもあるのです。 仮処分は通常、決定が出るのに保証金を積む必要がありますが、環境事件については保証金を積まない例のほうが圧倒的に多いと思います。名古屋地裁で仮処分決定に際して、500万円を積んだ例がありますがそれ以外は知りません。
 通常、裁判所においては、仮処分でも本訴でも、被害の証明・立証を住民側に負わせているのですが、1998年以降、甲府地裁・仙台地裁等において、住民側に証明・立証ができていないのに住民側が勝っています。
 しかし、現実には、環境事件は極めて勝訴の見込みが少ない事件であると痛感しています。環境事件の訴訟というものは、住民運動の一つであり、体力勝負であり、なおかつ住民が一致団結して結束し、勉強するということを要するのです。
 さて、訴訟の相手方でありますが、これはいうまでもなく行政を相手に、例えば、焼却場・処分場の場合ですと、建設費用の支出差止・許可の取り消し、業者ですと操業や建設工事差止、などがあります。しかし、いずれにせよ、情報公開が殆どされないのでデータを入手するのにかなり苦労します。業者の場合は、違法行為をしないと営業が成り立たないことが多いので、刑事告発をも検討しますが、例え勝訴したとしても既に汚染された環境に関して、相手方に原状回復能力がない場合が多々あります。そのような場合、勝訴しても汚染がとり残されることがあるのです。
 香川県の豊島の場合は原状回復費用に約200億円を要するとのことですが、この程度の原状回復費用がかかる個所は全国でも珍しくありません。
 さて、処分場について、1977年に処分場技術基準が出され、これ以降、処分場の処理技術等には一応の規則がなされていますが、より重要な問題はそれ以前の管理型の処分場が全国に約500箇所以上もあるということです。これは現有の約25%に相当するもので、法整備がされず未解決のままで一向に目途が立っていません。
 ゴミ問題は人間が生活していく上で避けて通ることができない問題であるにも拘らず、解決しなければならない問題が非常に多く、また、その未来も決して明るいものであるとは言えません。しかし、日常茶飯事の問題を見過ごさないためにも、私たちの「斗う住民と共にゴミ問題の解決をめざす弁護士連絡会」(ゴミ弁連)はゴミによって、もたらされる環境汚染から暮らしを守るため地域住民と共闘することをスローガンにしつつ、努力しております。
 

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