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今問われる国会議員の政策能力

拡充における論点は何か

 こうした個々の拡充論を具体的に検討していくためには、以下の論点について議論していかなければならない。

(1)予算制約との関係
 国家予算には限りがある。特にバブル経済崩壊後の低迷する日本経済の現状を考えると、巨額の税を投入して政治家の政策補佐機構を拡充するといっても、国民の理解はなかなか得られないだろう。
 現在の巨額の財政赤字をどうしていくのか。政府は財政構造改革法(財革法)を設けて、中期的な展望を描いていたが、昨年の春、景気対策上の観点から方針を転換し、財政再建路線を後退させた。

ただ、その方針転換はあくまでも経済の再生の観点から、しかも国民の強い要望のもとでなされたものであって、経済以外の分野に対する税金投入ができるようになったわけではない。
 要するに政治の側で、政治のリーダーシップを強化するという目的で予算を投入することに対して国民に理解してもらうためには何をなすことが必要かを考えなければならない。


(2)議員定数との関係
 (1)と関連するが、限りのある予算の中で、それでもなお国会議員の政策立案機構を拡充するために予算を投入する必要があるということを国民に納得・理解してもらうためには、現在の議員定数をどうするかについて政治としてきちんと答えを出さなければならない。
 選択肢としては現在の議員定数を変えずに行うか、議員定数を削減する一方で政策立案体制を拡充するかである。現実的には、中長期的にはともかく、今の議員定数を前提として行うのは難しい。とすれば、どうしても議員定数の削減が必要ということになる。議員定数の削減について、その必要性は以前から叫ばれているし、総論として反対する人も少なかった。しかし具体的に議員定数を削減するということになると、

衆議院と参議院の配分をどうするのか、比例区と選挙区の配分はどうか、どこの選挙区で削減するのか等々において、それぞれの政党および議員の浮沈に如実にかかわってくる問題ということもあり、これまではなかなか進まなかった。
 だが、議員定数の削減は昨年末からの自民党と自由党の連立(いわゆる自自連立)への動きの中で、にわかに現実性を帯びてきている。現在の議論では、衆議院の定数を50議席、それも比例区から削減するという案になっている。だが、50議席の削減だけで果して国民は納得するだろうか。また衆議院の比例区からの削減ということでまとまるか等、各政党の浮沈にそのまま反映する内容であるため、実現までにはまだまだ紆余曲折があることが予想される。


(3)国会議員の意識の問題
 国民からの批判として予想されるのは、次のようなものだろう。
 米国等と比較して不十分とは言え、現在も補佐機構は一応は存在する。今の国会議員は果して既存の制度、仕組みを十分に活用しているのか。むしろ、有効に活用していないのではないか。現在の制度・仕組みすら十分に活用していないのに、なぜこれ以上、拡充する必要があるのか。まず今の制度・仕組みの有効な活用を考えるべきではないかと。これは非常に説得力のある論点である。
 つまり議員の意識・認識に問題があるのではないかということである。これは与野党双方について言える。与党議員にとっては、これまで官僚という最も便利な補佐機構があり、現在もある。議員はどんな些細なことでも、電話一本で官僚を呼び付けて説明をさせたり、資料を用意させることができる。

官僚はいわば答えを持って来るのであり、議員が考えたり、発案したりする余地は少ない。何も国会における補佐機構に頼む必要性はないということになる。 野党議員は野党議員で、国会の補佐機構を十分に活用すべきであるのに、政府への批判のみに専念するあまり、新聞報道などを材料としながら細かな欠点指摘型になりがちだ。これまで自らの代替案、政策案を披露する努力も不十分だったと言えるのではないだろうか。
 確かに本論文の最初で述べたように政治環境の変化に応じて国会議員の意識も変化しつつあり、国会議員の補佐機構に対する認識や使い方は変っていく傾向にはあるが、果してそれがどの程度まで進んでいくかが問われる。


(4)政策補佐機関相互の有機性、総合性の問題
 たとえ国会議員の意識が変り、いざ国会の補佐機構を活用しようとしても、実は活用しにくいという問題、つまり個々の補佐機構どうしの関係性、有機性、総合性が不十分ではないかという問題も存在している。
 国会においても縦割り構造の弊害があり、たとえば委員会調査室同士の連携体制は不充分である。衆議院と参議院の間の有機性が高くない。
委員会調査室と国会図書館調査及び立法考査局との関係があいまいである等の問題点が指摘されている。
 既存の政策補佐機関同士の関係のあり方を再考し、もっと使い勝手のいい、効率的な政策補佐体制を構築しなければならない。


(5)議員立法を含めた国会全体の活性化策との関連
 議員の政策活動を活発化させるためには、たしかに政策補佐機関の拡充も大事だが、同時に議員立法の活性化策といった国会全体を活性化させていくような法制度あるいは環境の整備も不可欠である。 つまり政策補佐機関の拡充と国会全体の活性化は同時に有機的に連携しながら進めるべきである。

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