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土地家屋調査士として生きる〜どうすれば一人前の調査士になれるか〜

鈴木 修氏(元日本土地家屋調査士会連合会理事/土地家屋調査士)

聞き手:反町勝夫 株式会社東京リーガルマインド代表取締役

法律専門職を目指す多くの方が独立開業を視野に入れているものの、「この資格で食べていけるのか」、「合格したが開業して大丈夫だろうか」といった不安を抱えている。今回は、補助者経験なく土地家屋調査士として開業され、元日本土地家屋調査士会連合会理事という要職を務められた鈴木氏に、近年の土地家屋調査士を取り巻く状況や土地家屋調査士を目指されている方へのアドバイスをお話いただいた。


■新人でも努力次第でトップになれる時代

反町

鈴木先生は、仙台で土地家屋調査士として独立開業され、宮城県土地家屋調査士会でご活躍後は、日本土地家屋調査士会連合会理事という要職も務められ、土地家屋調査士業界を大所高所からご覧になってきています。近年、土地家屋調査士業界はどのような状況でしょうか。

鈴木 修氏(元日本土地家屋調査士会連合会理事/土地家屋調査士)

鈴木

平成16年あたりから、不動産登記法、土地家屋調査士法とたびたび改正が行われていることもあり、土地家屋調査士の業界は、変化が激しくなっています。測量の仕方も変わり、申請もオンライン化しています。そのような変化をどのようにして捉えていくかが非常に大切なのですが、その変化についていけていない土地家屋調査士が増えているという問題が出てきています。

反町

オンライン申請などは、若い方はすぐに慣れるでしょうし、これから開業しようという人には有利な展開になっているのではないでしょうか。

鈴木

そうですね。新人の方には、今が一番よい時期であるとお話しています。今は、ある程度経験のある土地家屋調査士も、先ほど述べましたような業界の変化に応じて、もう一度最初から勉強していかなければなりません。つまり、今は皆が素人に近いという状況ですから、新人でもスタートダッシュでトップになれる可能性は十分にあります。

反町

しかしながら、若手はやはり経験が浅いので、変化に慣れやすいだけでは、トップクラスになるのは難しいと思います。鈴木先生は、土地家屋調査士として成功するために重要なことは何だとお考えでしょうか。

鈴木 修氏(元日本土地家屋調査士会連合会理事/土地家屋調査士)

鈴木

私は次の3つのことをいつもお話しています。まずは、努力の必要性(何故努力が必要か)、次にその努力の方向性(ではどちらへ向かおうか)、そして3つ目が努力の具体性(具体的に明日から何をするのか)の3つです。資格業を目指す方は「会社が何もしてくれない。自分の努力で生きていこう」と思って開業したはずです。新人の中には、「せっかく合格しても、土地家屋調査士会は何も教えてくれない」とか「仕事がもらえない」と不平不満を言っている人がいます。しかし、今は、努力すれば業界のトップになりやすい状況なのですからもったいないと感じます。私は、実力の世界というのは、業界の中で足を引っ張り合ったりして振り落としていくという相対的なものではなく、お客様の役に立つという絶対的なものだと思います。

反町

おっしゃる通り、他人を蹴落としてばかりで、確かな実力がなければお客さんもきませんし、トップにはなれないでしょう。実務経験がないまま開業された鈴木先生が、ご自身の経験に基づいておっしゃっているのですから、非常に説得力があると思います。

鈴木

かく言う私も、開業当時は、不安はありました。しかし、その不安は、日々努力することで振り払っていきました。具体的に何をしたかと申しますと、仕事がないときは練習のために公園を測量したり,一つの仕事から違うパターンをシミュレーションしたり,条文をおぼえたりと、どんな依頼にも迅速に対応できるよう備えていました。これは土地家屋調査士に限らず、他の法律専門職種にも言えるのですが、自分か何のために資格を取ったのかということをよく考え、合格してからも常に努力することを忘れずにいることが成功につながるのではないかと思うのです。
現在、各地で新人研修や講演会の講師を務める機会があるのですが、より多くの方にそのことを伝えたいと思っています。

鈴木 修氏(元日本土地家屋調査士会連合会理事/土地家屋調査士)

反町

土地家屋調査士を目指している方の中には、土地家屋調査士の補助者をしながら勉強されている方も多いです。そういった方は、合格すれば非常に有利になるように思われますが。

鈴木

そうですね。実務経験を少しでも持っているのは自信になりますね。でもその方の一番陥りやすい問題は、「実務経験もその事務所だけのものなのにその自覚が無い」ことです。自分の勉強した事務所のノウハウが調査士界のスタンダードなのか、この検証は必要ですが、自分だけで検証するのは難しいことですね。積極的に土地家屋調査士会の研修会等に出席することによって、その検証ができると思います。

反町

私どもも、資格スクールとして、土地家屋調査士試験の受験生の皆さんを全力でバックアップしていきたいと思います。鈴木先生には、今後も土地家屋調査士の業界を活性化させるべく、ご活躍いただきたいと思います。本日はお忙しい中、ありがとうございました。


≪ご経歴≫

元日本土地家屋調査士会連合会理事
鈴木 修氏(すずき おさむ)
1981年土地家屋調査士開業(宮城会)。元日本土地家屋調査士会連合会理事(研究室次長)、前宮城県土地家屋調査士会副会長、前宮城県土地家屋調査士会境界鑑定委員会委員長などの要職を歴任。日本における資格業の位置づけについて、その創設当時の意味と、ここ10年の規制改革等の流れの中で現れた具体的変革の意味を踏まえ、現在の土地家屋調査士業の本質とこれからの未来について考察し、具体的に今日何をすればよいかを、各地の土地家屋調査士会の研修会で伝えている。中でも特に、入会前後の新人を対した教育をライフワークとしている。主な著書に、『Q&A表示登記実務マニュアル』(共著・新日本法規出版・2006)。2009年より宮城県土地家屋調査士会会長。

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