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司法書士の成年後見

大貫 正男氏 前社団法人成年後見センター・リーガルサポート理事長

聞き手:反町勝夫 株式会社東京リーガルマインド代表取締役

成年後見制度のスタートに先駆け、いち早く活動を開始し、今なお精力的に活動されている前社団法人成年後見センター・リーガルサポート理事長の大貫正男氏に、スタートしてから8 年経過した成年後見制度の現状と今後の課題についてお話いただいた。


■ 切実な状況においていち早く注目

反町

現在、大貫先生が理事長を務められた社団法人成年後見センター・リーガルサポート(以下、リーガルサポート)より出された『12人の成年後見人−たった一つの人生に捧げる後見物語』(日本加除出版・2008)を読んでいるところなのですが、成年後見というのは本当に大変だと改めて思います。成年後見制度は2000年4月にスタートしましたが、そのスタートに先駆けて、いち早く活動を開始され、リーガルサポートの設立にご尽力されたほか、現在に至るまで成年後見制度の確立、発展にむけて取り組まれている大貫先生のご苦労がしのばれます。

大貫

反町社長には、リーガルサポートの立ち上げ時に物心両面のご支援いただきまして、大変感謝しております。

大貫 正男氏 前社団法人成年後見センター・リーガルサポート理事長

反町

近年、司法書士を目指している方、目指すことを検討している方などとお話しますと、司法書士の成年後見に関する業務への関心が非常に高まっていることを感じます。それも大貫先生のこれまでの取り組みの賜物かと存じますが、そもそも、司法書士が成年後見業務にいち早く着目した経緯をお聞かせください。

大貫

まず、いち早く着目した背景として、司法書士は、判断能力の不十分な高齢者や障害者から不動産の取引や登記手続きを頼まれたとき、「本当にこれでよいのか」という自責の念にかられていたことが挙げられます。成年後見制度がスタートする以前は、禁治産・準禁治産制度(※1)による保護制度を利用することになりますが、禁治産制度は高齢者の行為能力をすべて奪ってしまい、対象者が重い精神の障害がある方に限定されるため、実際には使うことが困難です。そこで司法書士は、推定相続人全員から「処分してよい」という内容の同意書を取り、それをもって取引を進めたのですが、「本人が署名もできないような状態であるのに、これが本当に本人の意思にかなうことなのか」と、思い悩んだのです。そのような背景があって、私たちは1994年頃より、この成年後見制度に関心を持っていました。仲間を募り、研究会を開催し、高齢者等を対象とした相談会を開くなど積極的に活動しました。そのような活動が、1999年12月に成年後見関連法案が国会を通過すると同時に、リーガルサポート設立という、迅速な対応につながりました。

反町

司法書士の不動産取引への関わりは非常に切実な状況だったということですね。

大貫

そうですね、切実な状況の中、志ある人が「何とかしよう」と行動を起こしたというのが始まりだと言えると思います。

■ 法整備が進んだ成年後見制度

反町

ますます高齢化が進む日本社会にとって、成年後見制度は、自分の財産や権利を守るために不可欠な制度であり、重要なところです。政府も予算を投入していくのではないかと思われますが。

大貫 正男氏、反町勝夫対談

大貫

成年後見に関する法律はつくったものの、残念ながら現状においては十分な予算が投入されていませんし、インフラ整備も追いついていません。成年後見制度には、未だ議論の分かれる問題点やより利用しやすい制度とするため改善すべき論点が多々あり、これらについて検討を深めて真に役立つ制度とするためには、研究者や実務家など、多くの関係者が連携して制度を確立していく必要があります。そこで、私が副理事長を務めている日本成年後見法学会(※2)では、成年後見制度の利用をより一層促進するとともに、利用しやすい制度にしようという趣旨に賛同する多数の研究者をはじめ、学者・弁護士・司法書士・社会福祉士・公証人・税理士・裁判所関係者・医師等さまざまな実務家1,660名余りが参画して、研究やシンポジウム開催等を通して提言する活動をしています。また、2010年10月2日(土)〜4日(月)横浜市において成年後見法世界会議を開催します。

反町

成年後見を利用したいという人は増えており、社会的にも期待されている重要な制度であるだけに、いざやるとなるといろいろと問題が多いことと思います。成年後見は、これからどのような方向に発展していくのでしょうか。

大貫

これまで成年後見制度は、法律整備が追いついていなかったのですが、昨年あたりから少しずつ整ってきています。例えば、介護保険法の改正では、権利擁護、つまり成年後見の利用は義務である、と法律上も明らかにされました。さらに、高齢者虐待防止法ができ、行政や福祉関係職だけでなく、広く国民にも、養護者や養介護施設・同従事者による高齢者の虐待に対する通報義務や通報努力規定が課せられ、また、高齢者福祉に職務上関係のある者については、早期発見努力義務に関する規定が設けられました。それまでは、やってもやらなくてもよいというレベルだったのですが、これからは、相談をされたら応じなくてはいけないというレベルになっています。応じることができずに身体・生命に危害があった場合には、責任が生じます。もはや成年後見制度を利用するための体制整備は、「待ったなし」といった状況になっています。各自治体の理解も進み、各方面で活発な動きがあります。

反町

自治体は、成年後見のための部署を設け、予算を付けたり人を配置したりしないとならなくなったわけですね。具体的にどのような動きがあるのでしょうか。

大貫

介護保険法の改正に伴い、2006年4月、地域住民の心身の健康維持や生活の安定、保健・福祉・医療の向上、財産管理、虐待防止などさまざまな課題に対して、地域における総合的なマネジメントを担い、権利擁護や課題解決に向けた取り組みを実践することを目的とした地域包括支援センター(以下、支援センター)が創設されました。この支援センターは、目安としては2〜3程度の中学校区を担当区(人口15,000人〜30,000人)として、全国で5,000〜6,000ヵ所程度あります。各支援センターには、3名の専門職種(保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員等)が配置され、この専門職種は専門性を活かして相互連携しながら業務にあたっています。

反町

全国を網羅していますね。支援センターと司法書士とのかかわりは、どのような状況でしょうか。

大貫 正男氏 前社団法人成年後見センター・リーガルサポート理事長

大貫

リーガルサポートが、厚生労働省老健局の地域包括支援センター業務マニュアルにおいて、成年後見人候補者の推薦団体として紹介されたほか、同マニュアルにおける消費者被害の防止に関して連携をとる必要がある専門機関として司法書士が紹介されています。また、支援センターの相談を受けたり、運営協議会委員として活動するなど、連携の強化を図っています。

反町

インフラもかなり整ってきているように思われますが。

大貫

そうですね。一方、独り暮らしの方が成年後見を申し立てても、後見人のなり手がいないことが大きな問題になっています。司法書士と弁護士のほか、社会福祉士が比較的増えてきていますが、施設や行政に勤めている方がほとんどで、独立されている方は非常に少ないのです。そこで、市町村が中心になって、市民に成年後見人になってもらうという市民後見人養成講座が広まりつつあります。司法書士も成年後見人の養成に協力しています。私は団塊の世代の方などが「市民後見人」に手を挙げてくれるのを期待しております。

反町

身近な街の法律家である司法書士ならではですね。司法書士には、今後も市民に役立つ法律の分野を開拓していただき、成年後見制度についても中核を担っていただきたいと思います。本日はお忙しい中、ありがとうございました。

(※1)禁治産・準禁治産制度:成年後見制度以前の民法では、禁治産・準禁治産制度およびこれを前提とする後見・保佐制度が設けられており、精神上の障害により判断能力の不十分な人が保護されてきた。しかし、「心神喪失」および「心神耗弱」という要件が厳格であるため軽度の認知症・知的障害・精神障害に対応することができないことや、明治憲法下の「家」制度の影響を強く受けていること、「禁治産」という用語に社会的偏見が強いことなど、問題点も多かった。 以上
(※2)日本成年後見法学会: 成年後見制度の利用を促進し、またより利用しやすい制度にするために、さまざまな調査、研究やシンポジウム等を行うことを目的として2003年11月2日に発足した。

≪ご経歴≫

前社団法人成年後見センター・リーガルサポート理事長
大貫 正男(おおぬき まさお)
1948年生まれ。1972年早稲田大学社会科学部卒業。1975年埼玉司法書士会入会。全国青年司法書士協議会会長、日本司法書士会連合会理事、渉外司法書士協会会長、司法書士試験委員、早稲田大学法職課程教室講師、埼玉司法書士会副会長、社団法人成年後見センター・リーガルサポート理事長等を歴任。現在、日本司法書士会連合会民事信託法研究委員会委員長、日本成年後見法学会副理事長、法務省人権擁護委員、裁判所民事調停委員、埼玉県権利擁護センター権利擁護委員、財団法人公益法人協会評議員等。編著書に『成年後見制度−法の理論と実務』(有斐閣・2006)など。

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