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新たな社会保険労務士業務の展開

大野 実氏 東京都社会保険労務士会常任理事/特定社会保険労務士

聞き手:反町勝夫 株式会社東京リーガルマインド代表取締役

社会保険労務士には、各種社会保険に関する提出書類作成などの1・2号業務のほかに、人事労務に関するコンサルティングなどの3号業務がある。世界的大恐慌によって、わが国でも雇用悪化が進む中、人事労務の専門家である社労士への期待は高まっている。社労士を取り巻く現状を踏まえてお話いただいた。


■ 競争原理が活発に働き始める

反町

社労士志望者の多くは、企業にお勤めの方です。

大野

特に最近、増えています。これは、生活や仕事に非常に密接した業務を担う社労士が、社会人の方にとって身近な存在になっていることの表れだと思います。また、われわれ社労士の活力が高まっているのだと思います。

大野 実氏 東京都社会保険労務士会常任理事/社会保険労務士

反町

また、最近は女性の社労士もだいぶ増えたようですが。

大野

登録している社労士のうち3割ぐらいが女性です。女性の方が、より緻密に、細やかですから、評価は高いです。

反町

女性の方がむしろ高学歴かもしれませんね。

大野

そうですね。社労士業界はまだ男性の方が多く、男社会といったところがありますので、そこを切り開いている女性は、かなり努力をされていることと思います。

反町

一連の変化は、実務の面にも、影響が出ているのでしょうか。

大野

優秀な方がどんどん出てきていますので、先輩社労士たち「がんばらなくては…」と思いつつやっているといったように、競争原理が活発に働き始めている状況です。

反町

ただし、今ひとつ受験者が伸びないのは、非常に暗記の多い試験科目であるというところに原因にあるように思っています。従来の業務の中には、IT化でソフトがあって操作できればパソコンで処理できるものも多々あります。もっと訴訟関連を入れて、理論的な試験にして良いのではないかと思います。
また、司法制度改革を経て現在、各法律専門職は訴訟代理権など、その専門性を活かした新しい役割を得て、新しい業務を拡充させています。社労士も都道府県労働局に設置された紛争調整委員会の行う「あっせん」において紛争当事者に代わって意見の陳述等を行うことができるようになるなど、紛争解決手続代理業務ができるようになっています。このような流れからも、今後、社労士試験では、民事訴訟法を入れていかなくてはならなくなるのではないでしょうか。

大野

まずは、資格制度、試験制度の中に、コンサルティングや紛争処理を盛り込み、下地をつくっていかないとなりませんね。健康保険、年金保険といった保険制度のジャンルだけでは、なかなかベースの拠り所になりません。

反町

今は年金にしても、第三分野の保険がどんどん入ってきています。それに関して、FPもいろいろ作っていますが、社労士も当然その部分はカバーしなくてはならないのでは。

大野

そうですね。ただし、制度の趣旨や背景をよく理解して取り組んでいかないとなかなか大変です。もちろん、いつまでもこれまでの領域に留まっていたのでは、発展できませんので、社労士の能力を十分に発揮できる分野を開拓していかねばならないと思います。

■ 社会経済の変動に伴い変わる社労士のサービスの変化

大野 実氏、反町勝夫対談

反町

今回のように不況になると、各企業の人事制度が変わるようになります。そういった場面で社会保険労務士(以下、社労士)が現場に入って、就業規則等を変えたり、解雇の手続きを手伝ったりといった企業のサポートをしていく必要があると思うのですが、実際はどのような状況なのでしょうか。

大野

実際にそのような企業のサポートに取り組んでいます。社労士の先輩方や大手の事務所では、上場企業の支援もしています。しかし、そのアピールが小さくなってしまっていると思います。

反町

おっしゃる通り、そのような活動はあまり広く認知されていないと思います。

大野

私も、新聞などで日々顧問先の話題が出て来ているというのは実感として持っています。しかし、そのような社労士はまだ少数派だと思います。

反町

本当はもっと多くの社労士がそこに入っていく必要があるでしょう。

大野

そうですね。もっと自分から積極的に働きかけて、大手の企業を担当しようという社労士は、まだまだこれからだと思います。

反町

不況などの影響で依頼者側が変われば、サービスの提供も変わらざるを得ませんから、社労士の業務もこれから変化が出てくるでしょうね。

大野

そうですね。しかし、社労士は実際のところ、企業との契約率が低いのです。中小企業、事業所を含めた企業全体の中で、社労士と顧問契約を結んでいる企業は、3〜4割です。税理士では90%近くいっていますから、それと比べると大きな差があります。

反町

企業はたくさんありますから、3〜4割契約があるということもすごいと思いますが。

大野

しかし、8〜9割の企業が社労士と顧問契約があるというのが、一番望ましいと思います。本来であれば、ニーズがあると思います。しかし、企業内において人事・労務の問題を専門家に依頼して解決するという意識もまだ薄く、その担い手が社労士だという認識もまだまだ根付いていません。また、実際にそのような依頼があってもそれに十分に応えられる事務所が少ないというのも現実です。したがって、われわれ社労士が変わるとともに、外に対してPRもしなければいけないと思っています。

反町

それに対する研修などを社労士は多くやっているんですか?

大野

研修は、かなりの回数をやっていますが、情報提供のような感じになっています。本来は、情報提供をするだけでなく、各種制度をどのように運用していくかといった点について、経験やノウハウを仲間たちにうまく教育できるようにならないとなりません。しかしながら、教える側もまだ十分ではなくて、指導体制が十分ではありません。

反町

課題は多いようですが、40周年を迎えられ、振り返ると大きく変わってきたかと思います。

大野

業界が法制化されて40年ですから。目指すはやはり半世紀です。それに向けて、これから10年で私たちがどう変われるか。この10年で、企業における社労士の認知度合いも変わると思います。また、法律専門職の社会貢献という意味での意識も大きく変わっていると思います。

■ 人事労務のスペシャリストとしての地位を確立

反町

コンサルティング業務の拡大が期待される社労士ですが、大野先生はそこについてはどのようなお考えをお持ちでしょうか。

大野 実氏 東京都社会保険労務士会常任理事/社会保険労務士

大野

社労士としてコンサルティングすることについて、経営コンサルティングにおいて、少し人事に軸足をもって行うことだと考えている方がいらっしゃるのですが、本来はそうではないと考えます。社労士は、人事・労務のスペシャリストで、各種社会保険に関する手続きを行う以外にも、法的な背景や福利厚生の制度・法律、あるいはその周辺の一般常識も含めたものをベースに持っています。したがって、社労士としての人事コンサルティングは、そのような社労士のスペシャリストたる所以を強く意識してやっていただきたいと思っています。

反町

社労士は国家資格ですから、そういったしっかりとしたベースをお持ちの方々が多いでしょう。

大野

かつて、肩書に「社労士」とあると、本来であれば100万円もらえる仕事であっても、社労士ということで、50万円で依頼されるというような値踏みがされていました。したがって、社労士でもあえてそのことは言わず、コンサルティング会社にいる人事関係のコンサルタントと名乗る方が多かった。しかし、いつまでたっても「社労士」という看板や名刺で人事・労務のコンサルティングができず、社労士自身が自信をもってやっていけるようにならないと、職域がなかなか広がっていきません。それぞれの法律専門職で立ち位置が違っていても、その中で専門性を打ち出して、正しい評価を受けられるようにやっていければいいわけです。

反町

それでも、今までの社労士の先輩方が努力されてきた賜物で、だいぶ変わったのでは。

大野

そうですね。制度や法的な枠組み、位置づけについては、先輩たちにこれまでやってこられた40年があり、他の法律専門職と比べても、見劣りをするようなものではありません。したがって、これからはわれわれが、仕事をして企業に評価されることを通じて、新たな地位を獲得できればと思っています。

反町

社労士への期待が社会的にも高まっており、業務の拡大とともに、社労士の位置づけも変わっていくことと思います。本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。

≪ご経歴≫

東京都社会保険労務士会副会長/特定社会保険労務士
大野 実(おおの みのる)
1952年東京都生まれ。1975年神奈川大学法学部法律学科卒業、大学在学中の1974年社会保険労務士試験合格。1977年社会保険労務士大野事務所開業。1986年日本大学大学院修士課程修了(管理工学専攻・工学修士)。2003年社会保険労務士法人大野事務所設立。日本大学生産工学部管理工学科非常勤講師(平成17〜19年)。株式会社デジタルガレージ監査役。『人事・労務診断ハンドブック』(共著/日本経済新聞社・1995)、『労務管理の実務ポイント』(共著/中央経済社・1994)、『定年前後の手続ガイド』(梧桐書院・1997)、『経営労務監査の手法』(共著/中央経済社・2006)『経営労務監査の実務』(共著/中央経済社・2009)など。

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